上橋菜穂子著『鹿の王~水底の橋』続編もおもしろい!一気に読める♪
上橋菜穂子氏は、物語を書き終えると「空っぽ」になるそうです。「書き終えた、という興奮とともに、空白の地平が見えるのです。その茫漠たる空白を前に呆然とたたずむことになるのです」と。
超大作『鹿の王』から2年間、まったく物語を書くことができなかったという上橋氏が、本当に久しぶりに、書きたい、という思いがこみ上げてきたテーマ。
身体の奥底からつきあげてくる衝動と共にやってくる何か、猛烈な熱が心に吹き上げてきたという本書。
『鹿の王』は書き上げるのに5年もかかったといいますが、本書は一気に書き上げたと思われます。それだけ作品に勢いを感じます。といっても本書も緻密な取材と研究があってこその具体的な素晴らしい内容となっています。
また『鹿の王』の続編ならば、ヴァンとユナのその後を書けば良いのにといわれたそうですが、ヴァンとユナは登場しません。またの機会を楽しみに待ちたいと思います。
本書はホッサルとミラルの物語です。
『鹿の王』を読んだ読者ならばお馴染みのキャラです。
そして『鹿の王』よりも複雑な人間関係はありませんので、迷うことなく読み進めていけました。もちろん、面白いからこそ、ページが進むのですが。
『鹿の王』を読んだことのない人でも、その世界にすぐに浸ることができるでしょう。似たような名前の登場人物に慣れるまでは巻頭の“人物紹介”が有り難いです。でもどの物語を読むにもそれは変わらないですものね。
本書は、高貴な身分とされるホッサルと、庶民のミラルの結婚問題も浮上してきます。あきらめかける二人でしたが、最後は思わぬ展開になります。まだ結婚していません。次回作に持ち越しです。
また国の跡継ぎ問題。
清心教祭司医とオタワル医術との対立問題も。
本書の肝心は最後。誰が本当のことを言っているのかの探り合いの決着がつきます。
ホッサルとミラル、ヴァンとユナのその後もまた読んでみたいです。
『鹿の王』の感想はこちら↓↓↓
あらすじ
東乎瑠帝国では新しい宮廷祭司医長選びが本格化してきた。
今まではオタワル医術と宮廷祭司医術が均衡を保つようにうまくやってくれていた医長・於津那だったが、彼は高齢。
現在最有力候補とされる津雅那が医長になったならば、オタワル医術を「邪教の汚れたワザ」と言い放つような男であるから、オタワル医術は大変な逆風の中に置かれることになる。
そんな中、ホッサルとミラル、マコウカンは安房那領へ行くことになった。
王藩領の祭司医長・呂那の愛弟子で黒狼熱患者の治療も手伝ってもらった、安房那主の末息子・真那の故郷で、姪御が難病であるため、ぜひ見立ててほしいと誘いを受けたためである。
ミラルの父も橋造りに行ってもう5年も経つという。ミラルの父は橋造りの名工として知られる職人だった。
新しい物語の舞台は安房那領。
次々と新しい問題が起きます。