映画『スパイの妻』演技・演出は素晴らしい!結末が残念
昭和初期の映画セットは素晴らしく1940年頃の世界に視覚から連れて行ってくれます。
蒼井優さん、高橋一生さんたちの衣装もレトロで素敵です。
東出昌大さん、蒼井優さん、高橋一生さんは素晴らしい演技でした。
特に蒼井優さん、高橋一生さんの長回しの言い合いの場面は見応えがありました。
演技達者な人同士の掛け合いは感動さえ生みます。
高橋一生さんのポーカーフェイスぶりはお見事ですね!
何考えているかわかりづらいけれども、なにかある、ポーカーフェイスでシラを切る演技は抜群ですね。
結果、妻をもダマしたのですから。
「僕は嘘をつけない人間なんだ」
という人ほど嘘をつくとは本当なんだと思わせる役でしたね。
お見事といえば、蒼井優さんが「お見事です!」と絶叫する場面もお見事でした!
「そういうことだったのか」と合点がいく、自分もまんまとだまされた、さすが我が愛する人といくつもの感情を見事に表していると感動しました。
ラストは邦画にありがちな
「あとは各自考えてください」的な終わり方に感じました。
ヒントをちょこちょこと字幕で出して
含みを持たせて
「どうとらえようと御自由に」的な。
でもそれを良しとする人や、あれで決着が着いたと思える人もいるかもしれませんね。
でも私はラストがすっきりしないと感じた映画でした。
目次
もう一人のクロサワ
「もう一人のクロサワ」といわれ、国際的に高く評価されている黒沢清監督は現在65歳。
ベネチア国際映画祭への挑戦は今回が初めてです。
言うまでもなく「もう一人」といわれるゆえんは黒澤明監督との対比。
黒沢清監督の代表作は「トウキョウソナタ」「岸辺の旅」など。
「トウキョウソナタ」は2008年、香川照之、小泉今日子主演で第61回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」審査員賞、第3回アジア・フィルム・アワード作品賞を受賞。
「岸辺の旅」は2015年、浅野忠信、深津絵里主演で第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞しました。
ベネチア国際映画祭
イタリアのベネチア国際映画祭で黒沢清監督は監督賞を受賞しました。
日本の監督が監督賞を受賞したのは北野武監督の映画「座頭市」(2003年)以来、17年ぶりとなります。
ベネチア国際映画祭といえば
【世界3大映画祭】
ベルリン国際映画祭
カンヌ国際映画祭
ベネチア国際映画祭
の三つを主に指します。
黒沢清監督は
「少し古い時代の日本のドラマですので、果たして海外の方にどれくらい理解されるのかなと思っていました。
このコロナの時代に、何かしら人の心に刺さるものがあるだろうと信じています」
とのこと。また
「この年齢になってこんなに喜ばしいプレゼントを頂けるとは夢にも思っていませんでした。ほんとに長い間、映画を続けてきてよかったなとしみじみ感じています」
と喜びを語りました。
『スパイの妻』は
「夫婦の愛」や「国家と個人」をテーマにした意欲作です。
今まで現代を舞台にしてきた監督が戦争の時代を舞台にした作品も初めてです。
あらすじ
ネタバレ注意!
太平洋戦争の直前に偶然国家機密を知ってしまった貿易商を営む勇作(高橋一生)。
正義感からどうにかして世間に公表しようと画策します。
それを妻(蒼井優)も手伝いたいと懇願します。
しかし勇作はスパイ容疑で憲兵に目をつけられていました。
念願を果たすには“亡命”するしかないと考えた勇作は、嫌がる妻を説得して、別々に渡航しようとします。
絶対に成功すると夫を信じて従った妻でしたが、計画は失敗に終わり、妻は憲兵に拘束されてしまいました。
しかしそれは、夫が妻を愛するあまり妻に危害が及ばないようにするため、また日本軍の卑劣な所行を暴露する念願を果たすため、苦渋の作戦だったのです。
計画は失敗したのではなく、成功したのでした。
成功させるため、我が妻をもだましたのでした。
賢い妻は気づきます。
「お見事です!」
と絶叫します。
妻が狂ったと判断した憲兵は、妻を精神病院へ入れます。そこで終戦になります。
勇作の行方は・・・。
スタッフ
監督:黒沢清
脚本:濱口竜介 野原位 黒沢清
キャスト
蒼井 優(福原聡子)
高橋 一生(福原優作)
坂東 龍汰(竹下文雄)
恒松 祐里(駒子)
みのすけ(金村)
玄理(草壁弘子)
東出 昌大(津森泰治)
笹野 高史(野崎医師)
公開日
映画
『スパイの妻』
2020年10月16日公開