『戦火の馬』スピルバーグ監督〈映画と原作〉後世に残したい名作!

日本におけるスピルバーグ監督の映画作品の中では華々しく人気がある作品ではないようですが、原作が素晴らしいのでぜひ知っていただきたい。

スピルバーグ監督も原作に惚れ込んで映画を作る決意をしたといいます。

後世に残したい名作のひとつなのは確かですが、そのような作品はたくさんあります。しかし巨匠スピルバーグ監督がメガホンをとったということで「観てみようかな」と思う人も(私もそのひとりですが)いるに違いないですね。

 

小説『戦火の馬』

時代背景

小説『戦火の馬』はイギリスの作家マイケル・モーパーゴが第一次世界大戦で戦った軍人の話を元に1982年に発表した作品です。

第一次世界大戦は1914年に始まったとされますが、その少し前から物語は始まります。日本でいえば大正時代が1912年から始まっていますから、大正時代に入ったばかりのころの物語です。

当時は自動車に乗っている人はまだ少なく馬が貴重な乗り物であり、農耕馬の時代でした。

貴重で大事なはずなのに、馬に対する扱いはひどい時代だったことが小説からよくわかります。

今だったら動物愛護団体から悲鳴が上がりそうです。

 

 

馬が語る

小説ではその馬が全編語る手法をとっています。

しかも繊細で感受性豊かな、馬の語りです。本の語り手ではありますが、実際に馬は言葉を発することができません。馬の心の動きや感じたことを事細かにまるで人間のように表現しています。

その技法が素晴らしいのです!

 

 

馬の運命を決める飼い主

馬は競売にかけられて飼い主がくるくる変わります。特に戦時中は軍の意志が第一で、軍人が「俺のもの」といえば庶民は従わなければならなかったようです。

飼い主が手荒な人なのか、優しい人なのかで馬の運命は180度変わります。

まあ私たち人間もそうですね。良い上司なのかいじわるな上司なのかで、優しい配偶者なのか厳しい配偶者なのかで会社生活も、結婚生活も左右されますね。

人間ならば言葉を発してその場から去ることもできますが、馬はなにも言えない。じっと耐えるしかない。されるがまま。

小説の馬ジョーイは人間の言葉がわかります。どういう人間なのかも、されたことを覚えています。

動物も生き物なのだから、優しく扱わないといけないと改めて思います。

 

 

 

小説のあらすじ

競売でなかなか買い手がみつからなかったやせっぽちの生後6ヶ月にならない子馬はようやく酔っ払いの農夫に買われた。母馬は立派な農耕馬だった為すぐに買い手が見つかりそこで親子馬は一生の別れとなった。

農夫が子馬を家に連れて帰ると息子のアルバートが大歓喜で迎えてくれた。馬をジョーイと名付けよくかいがいしく世話をした。

農夫は村の仲間にジョーイを1週間で鋤を引かせて農作業ができるようにしてみせると賭けをしてきたという。できなかったら売り飛ばすと。アルバートは必死にジョーイを特訓した。ジョーイは一人前に鋤けるようになった。おかげで売り飛ばされずにすんだ。

ところが戦争が始まって状況が変わった。農夫は約束を破り借金のかたに軍人ニコルズ大尉にジョーイを売り払ってしまった。

ニコルズ大尉はジョーイを素晴らしい馬だと誉め称え「ちゃんと世話をするから安心するように」とアルバートに約束してくれた。

かつてやせっぽちだったジョーイは誰が見てもほれぼれするような立派な若馬に成長していたのだった。

たてがみと尾が黒く美しい赤茶色。
おでこには真っ白な十字模様がくっきりと見える。
足先は真っ白い靴下をはいたようにキレイに揃っている。
見た目も特徴ある馬だった。

イギリス軍にひきとられたジョーイは、同じ若馬のトップソーンと出会う。ジョーイより5センチ以上背が高く、光沢のある黒馬だった。

トップソーンとジョーイは気が合った。軍を代表する名馬となった。

ニコルズ大尉は親切で優しくよく面倒をみてくれた。しかし戦死してしまった。

トップソーンの持ち主スチュワート大尉が、ワレン騎兵にジョーイの世話を託した。ワレン騎兵も手を尽くして世話をしてくれた。

ところが戦いの中、ドイツ兵に捕まってしまう。トップソーンとジョーイは今度はドイツ軍のために傷病兵を運搬することになった。しかし世話は少女エミリーとおじいさんがしてくれることになった。親切な二人の世話にしばらくは幸せな日々を過ごした。

それもつかの間、将校が現われトップソーンとジョーイを大砲を運ぶ馬に使うからといって連れて行ってしまった。優しいエミリーとおじいさんを離れて過酷な労働につくことになった。凍てつくぬかるみに蹄までつかったまま夜を過ごし栄養不足と重労働で、毛が抜け落ち皮膚がひび割れ体調は悪くなるばかりだった。病状が悪すぎる馬は銃殺された。

どの馬も体が弱り切り、丈夫だったトップソーンもとうとう死んでしまった。悲しみにうちひしがれしばらくはトップソーンのそばにいたジョーイだったが、突然すさまじい轟音が聞こえ驚いて逃げ出した。あちこちで大砲が火を噴く。白い光がパッとあがって頭の上で爆発する。そんな中を無我夢中で走っているうちに有刺鉄線に前脚を引っかけてざっくりと切ってしまった。とうとう走られなくなり、よろよろと歩き続け「無人地帯=生きた人のいない場所」と呼ばれる鉄条網で囲まれたところまでやってきて行き場を失った。

そこには敵対するドイツ兵とイギリス兵がいた。ジョーイの所有をどうするかコインを投げ裏か表かで決めるという。

勝負はイギリス兵が勝った。ジョーイは再びイギリス軍に連れて行かれた。傷病馬運搬車に乗せられ厩舎へ向かうとそこで懐かしい声を聞いた。それは子馬の頃からかいがいしく面倒を見てくれたアルバートの声だった。

アルバートはジョーイに会うために軍に志願して働いていたのだ。まわりからは「ジョーイに会うには50万分の1の確率。おまえはまったく頭がおかしいよ」と言われてもジョーイに会えることを信じていたアルバート。

そこにやってきた一頭の馬。ひどく汚れ足を怪我していた。丁寧に汚れを落としていくと白い靴下をはいたかのような足が見えてきた。4本揃った。そして額の汚れを落とすとそこには白い十字模様が浮き出た。黒いたてがみとしっぽ。赤茶色の鹿毛。そして昔やったように両手で口をおおってフクロウのような口笛を鳴らした。すると馬はかけよってきてアルバートの肩に鼻先をよせた。

ジョーイとアルバートは奇跡の再会を果たしたのだ!

ところが日増しに元気がなくなるジョーイ。有刺鉄線にざっくりと切った傷が元で破傷風になっているようだった。懸命に看病するアルバート。そのかいあってなんとか生き延びたジョーイ。

これで一緒に故郷へ帰れる!
と思っていたアルバートだったが、また悲劇が!

馬たちは一緒に帰らないという。馬はフランスで競売にかけられると決まった。しかもほとんどが食用に買われるという。軍隊である以上命令は絶対だった。

今度こそ本当の別れなのか?!

ところが最後の最後に予想もできない感動的な結末が訪れる!

 

 

映画

動物を主人公に撮影するにはとても困難だということは誰にでもわかるでしょう。人間でも思うような芝居が難しいのに、動物に芝居をしてもらうなんて!

希望するシーンがとれるまで根気よく撮り続けたに違いありません。

実際どうやって撮影したんだろうと思うシーンが多くあります。

それに軍隊の話ですから、大砲や戦車や武器、多くの軍人、飛び交う砲撃の火。

トップソーンの倒れて死ぬシーンなど。

目が釘付けになります。

ストーリーは原作と追うパターンではなく、多少変えています。

それは映像として見る場合効果的なのでしょう。

違和感はありません。

素晴らしい原作、映画、どちらもお奨めです!!