「文豪ノ怪談」テーマでくくった文豪の短編集「恋」

文豪が書き残した怪談・怪奇小説の傑作をテーマ(夢・獣・恋・呪・霊・影・厠・死)ごとに編纂したシリーズです。読者対象は小学校上級~中学生。語彙の意味や解説がふんだんに盛り込まれていて、普段使わない言葉や昔の言葉や道具などの丁寧な解説付きです。また本ごとにイラストを変えているので、イラストも楽しめます。

 

昔の小説は難しい言葉を使うのが流行だったのでしょうか。それともそうでなければ小説家としてバカにされたのでしょうか。やたらと難しい言葉を使う傾向がありますよね。また得意げに聖書からの引用や外国事情をインテリ風に登場人物に語らせたり。インターネットもパソコンもない時代に書き上げていたと考えると凡人には真似できない文才と知識量です。

 

ときどき文豪と呼ばれる人たちの小説に触れて、小難しい言い回しや普段使わない言葉を謎解いたり、昔の文化や風習を想像したりしたくなるときがあります。そういう読書の時間も楽しみのひとつです。

 

それにしても文豪とはどういう人をいうのでしょう?

 

まず生きている人は文豪とは呼ばないですよね。大人気作家・東野圭吾さんや村上春樹さんなどは、文豪と呼ばれていないですが、将来文豪と呼ばれるのでしょうかね。

 

この本のシリーズのラインナップを見てみると、水木しげるさんや松谷みよ子さんも文豪というくくりですね。

 

水木しげるさんは漫画の功績は偉大なものだし、松谷みよ子さんは児童文学と民話研究において高評価を得ているということから文豪ということでしょうか。

 

川端康成や夏目漱石が文豪というのはしっくりくるのですがね。

 

つまり
「文豪とは他界した功績を残した文学創作活動をした人」
ということでしょうかね。

 

また怪談とは
主に怖さや怪しさを感じさせる話、不思議な話、特に妖怪や幽霊にかかわる話
とのことです。

 

私は妖怪や幽霊は1ミリも信じていないため、まったく怖くなく「へぇーー」「ふぅ~ん」「なんで怖がるんだろう」といった感じです。しかし「どんなところが怖がるポイントなのかな?」といった点で興味はあります。

 

不思議な話も「ありえない話」のですが、自分のツボにはまればおもしろいですし「よく思いつくなぁ」と感心します。

 

「文豪ノ怪談シリーズ」の企画はとてもおもしろいですし、ぜひお薦めしたいところですが、小学高学年からというところが悩ましく思います。

 

また男性目線の選書を感じます。文豪と呼ばれる人は男性が圧倒的に多いということと、昔の価値観で書かれているものなので、仕方がないのかもしれません。

 

「恋」シリーズは、女性は男性にしたがうもの、男性側が欲すれば女性も同じ想い、美しい女性に心ときめくといった男性本位の話がそろっています。よく出来た傑作だとは思いますが。

 

 

第3巻「恋」
【収録作品】
泉鏡花「幼い頃の記憶」
佐藤春夫「緑衣の少女」
小田仁二郎「鯉の巴」
川端康成「片腕」
香山滋「月ぞ悪魔」
江戸川乱歩「押絵と旅する男」
中井英夫「影の狩人」
【幻妖チャレンジ!】
上田秋成「菊花の約」