内館牧子『牧子、還暦過ぎてチューボーに入る』気取らないエッセイ

内館牧子さんは、エッセイが好きでよく読んでいました。

特に日本の高度経済成長期直後に大手企業・三菱重工業に入社し、脚本の学校に通っていたといった内舘さんのお若い頃のお話が大変興味深くおもしろいのです。大企業ならではの会社の様子や、女性社員の不平等さなど、当時のOLの苦労があって今の時代があると感じます。

また内舘さんが脚本の学校へ通っていたとき、毎日映画を1本観るようにといわれて、観まくったといったお話など、脚本家として成長されていくお話も興味深かったです。

 

今でこそ映画の日が月1であって、レディースディや各映画館お得な日など活用したら、1800円で映画を観ることはないですが、当時はおそらくそんなに安くはなかった時代でしょうから、大変だったかと思います。もっと昔だったら安かった時代もあったようですが。レンタルも普及前でしょうし。

それに会社帰りに1本映画を観て帰る毎日というのも、映画好きでもよっぽどの人です。疲れているところ、早く帰りたくなる日もあるでしょう。

まじめに行なっていたのだから、すごい努力家だと思ったものです。

 

 

3年くらい前でしょうか、本屋さんで『終わった人』を見かけました。

「終わった人」という本のタイトルと花束を持ったくたびれた男性の表紙のイラスト。これだけでピンときました。ちょうど、定年後の男性の暮らし方など社会問題にもなっていたので「さすが、目の付けどころが素晴らしい」「これはおもしろいに違いない」「ヒットしそう」と読んでもいないのに感じました。

そう感じさせる、本のタイトル、装丁がすばらしい。

 

すぐに図書館に予約して、しばらくして回ってきて読みました。内容は思った通りの展開ですが、さすが文章がうまいし、おもしろい。きっと映像になるだろうと思っていましたら、なんと舘ひろしさんで映画になりました。キャストにびっくりでしたが、映画はヒットし、舘ひろしさんはモントリオール世界映画祭で最優秀男優賞、日本アカデミー賞では主演男優賞受賞という快挙を成し遂げました。

 

内舘さんはこの「終わった人」で再びメディアに出てきた感があります。

 

そして私も思い出したように、またエッセイを読み始めました。

 

本書「牧子、還暦過ぎてチューボーに入る」も文字通り、今まで料理嫌いだった内舘さんが、60歳過ぎてから料理にハマった様子が書かれています。

それまで料理はしないと豪語していたそうですが、徹底した性格ゆえか、ハマりかたも半端ないですね。ベランダの野菜作りも、種類が豊富すぎます。

 

嬉しかったのは、私も好きな料理家・ヤミーさんを紹介してくれていることです。

ヤミーさんは手間をかけないでおいしい料理ができるレシピがお得意です。しかも多国籍なので、料理がおもしろいのです。

 

そしてさすがだなと思うことは、ひとつには、ただの食エッセイにとどまらず、現代の社会問題もちゃんととりあげていることです。

 

それは、糖質制限に警鐘を鳴らしていること。

 

当時60歳半ばのご友人が糖質制限で見違えるほどやせて驚いたわずか1年後にリバウンド。以前より太っていたというお話。そして日本人がお米を食べなくなったのは、果たして正解なのだろうか?という問題にも触れているのです。

 

宮澤賢治の「雨ニモマケズ」の中で「1日に玄米四合を食べ」という箇所。私も「食べ過ぎじゃない?」「よく食べられたよね」「おなかがすいていたら食べられるものなのかな」とずっと思っていたことでした。

 

しかし最近では「四合のご飯と少しの味噌と少しの野菜」というのはありえるのではと思っていたところ、内舘さんもまったく同じ御意見でした。

 

「日本人にとってお米って大事なんじゃないの?」
「ご飯とお味噌汁が基本」
という考え方が糖質制限と真逆のところにくすぶっている状態かと思います。

 

「ご飯を食べたら痩せないんじゃないの」
と言われそうですが、
「お味噌汁と少しのおかず」
が鍵なのです。

「それじゃあ、タンパク質が足りないんじゃないの?」
とも言われそうですが、結局はバランスになるのでしょうか。

 

それと、料理に興味を持ってわずか数年で、鈴木登紀子さんこと『ときこばあば』にいきつくとはさすがです。

 

それにしても、お元気そうでなによりです。

パワフルな内舘さんはしばらく続きそうです。

 

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