映画『トーベ』ムーミンの誕生と恋愛物語

ムーミンの作家として知られるトーベ・ヤンソン。

絵本作家なのかしら?と漠然としたイメージをもっていました。

しかしトーベは波乱万丈で情熱的な人生を送った、画家、風刺画家、漫画家、小説家でした。

トーベの父親は彫刻家、母親は風刺画家でした。小さい頃から両親の活動を見て育った影響なのか、トーベはわずか14歳にして絵描きとしてデビューを果たします。それから約70年間にわたって創作活動を続けました。

またトーベは未婚でした。しかし男女問わず自由恋愛の人でした。

妻のいる男性との恋愛もありましたが、当時同棲は恥ずかしいこととされていました。トーベはその人となら結婚してもいいかもと思いますが、結局別れています。

トーベの時代、同性愛は犯罪、病気、宗教上の重罪とされていました。

女性を愛したトーベは二人だけがわかる言葉を考え出しました。ムーミンキャラクターの“トフスラとヴィフスラ”のように。

 

恋愛映画

映画『トーベ』は、恋愛を主軸に描かれています。

トーベが巡り合った愛した人、幸せの日々、愛が壊れたとき、新しい出会い。

恋愛の葛藤は日々の気持ちを揺らし、芸術活動に影響します。

映画のストーリーの一部は真実で、一部は創作でしょうけれども、赤裸々にされた恋愛事情に自分だったらイヤだな、有名人はここまであばかれるのかと思ったものです。

それもトーベは不倫、同性愛、未婚ということで興味を持たれやすいのかもしれません。

 

 

ムーミンの誕生

初期のムーミンはトーベが手紙などの署名の一部でした。名前をサインしたそばにムーミンらしき絵を添えていたのです。

最終的な今の形のムーミンとは似ても似つかない、鼻先の長いムーミンです。

でもムーミンという名前はついていました。

やがてトーベは芸術活動の息抜きとして、ムーミンの世界を描いていきます。趣味のようなもの、現実逃避するための別世界でした。

しかし恋人アトスの助言により、本格的にムーミンを描いていくことになります。

 

 

トーベと父

トーベは油絵を描いて売っていましたが、その収入だけでは食べていけず、イラストや風刺画など、さまざまな絵を描くことをして生活していました。

父親はそんなトーベの活動を「それが芸術家なのか」と批判します。父と子は仲が良くなかったようです。会うとケンカが続きとうとうトーベが実家を出て行きます。しかし父親が亡くなった後、トーベの描いたイラストや新聞の切り抜きを集めたアルバムが見つかりトーベはむせび泣きます。

 

 

最初の日本のムーミン

日本でのムーミンはどのように広まったのでしょうか?

最も古いムーミンの物語本は1964年『少年少女新世界文学全集 第27巻』所収の「ムーミン谷の冬」(講談社)です。

漫画は1969年に『ムーミンまんがシリーズ』(講談社)が刊行されています。

アニメシリーズは1990年テレビ東京系列で全78話が放送されました。

日本からテレビ局用にムーミンのカラーアニメを作りたいという交渉があったときトーベは残念ながら日本のアニメや児童向けの映画を観たことはありませんでした。しかし日本のアニメの企画には興味を示したようで許可がおり、日本でもアニメ製作が実現しました。

日本国内では大人気となったムーミンでしたが、海外へ出回ることはありませんでした。なぜなら

ムーミンパパがムーミントロールに体罰を与えたり

ムーミン谷で戦争が起こったりと

非暴力のムーミン世界に反していた内容だったので、トーベが国際的な配給を禁止したのだそうです。

しかしムーミンはアニメ放送されたからこそ、認知度があがり、爆発的な人気を得たのだと思います。

 

映画
『トーベ』
2021年10月1日公開