シートン動物記『下町のネコ・キティ』おもしろいネコの習性!
シートン動物記、小学生の頃、読みました。なつかしいです。
そのなかの「下町のネコ キティ」。
どういうお話だったかな?読みながら思い出しました。
目次
あらすじ
ニューヨークの裏通り。がらくた置き場のクラッカー箱。ほかのきょうだいネコが黒い雄猫に次々と襲われる中、母猫が駆けつけ、かろうじて助かったネコが本書の主人公『キティ』です。その後母親猫とはぐれてしまったキティは、さまざまな困難に行き当たります。
キティ自身母親となって子どもを産んだときは、獲物としてつかまえてきた子ウサギを子ネコたちと同じように母乳を与え育てることになります。急所を刺さなかったので、キティの母性本能が働くことになったからだそうです。
悪徳ペットショップにつかまり、1週間ラードと魚の頭を与えられ、太らされ、『ロイヤルアナストロン』というウソの血統書をつけられペットショーに出品させられました。
元々、ごくうすい灰色の地色、鼻、耳、尾の先に美しい純白のはん紋のある美しいネコだったキティは、カラダを丁寧に洗われ、豊かな食料を与えられ、みちがえるほど美しく生まれかわったのでした。そしてペットショーでは、最高位の金賞を受賞し、ネコの最高価格で上流階級のお屋敷に売られていきました。
上流家庭での暮らし
キティは野生の猫の習性をあらわにして、とてもおとなしいネコしから知らない上流階級の飼い主の家族を驚かせますが、彼らはキティを高貴なネコと信じて疑いません。
飼い主がそっとなでようとしただけでキティはひどく反抗しました。→古代から続く高貴な血統なのだから、カラダをさわられるのをきらって当然と思いました。
キティは犬を見ると、ディナ-テーブルの真ん中にかけあがります。→犬に触られるとカラダが汚れるという高貴なものの心の奥底にねざす潔癖さのためとしました。
キティは1羽のカナリヤを襲って殺しました。→オリエント王の残酷な性癖が伝えられていると解釈しました。
キティは高級なカーペットを、おしっこでしばしば汚しました。→オリエントのネコだからむりもないといって気にしませんでした。
キティはゴミの容器のなかに入って、汚いものにカラダをおしつけころげまわって遊んだりしました。→ふだんが上品なのだから、たまには気晴らしも必要と理解しました。
上流階級であるがゆえの、かってな解釈。滑稽でおもしろいです!
ここのくだりが好きが好きだったことを思い出しました。やはり小さい頃、読んでいた物語でした。
ホームシックに
キティはよくお世話され、ぜいたくな食事をあたえられ、賞賛され、家族みんなの関心のまとでしたが、少しも幸せではなかったのです。ホームシックにかかっていました。
そして自分が生まれ育った下町へ帰ろうとします。
「人間にとっては、あまりキレイではない船着き場のイヤなにおいだったかもしれません。そのニオイがキティにとっては、巣穴を思い起こす嬉しい知らせでした」
そして、生まれ育ったがらくた置き場に無事に戻ってきますが、また悪徳ペットショップにつかまって、上流家族のもと戻らされてしまいます。そして前回以上に大切に扱われます。
上流家族の料理人がいいます。
「ネコが自分の足をなめたら、ひと安心。ちゃんといついて家のネコになるってきいています」
といってキティの4つ足にグリース(動物の脂)をぬります。
キティはグリースの味のよさを知って1時間かけてなめあげます。
「さあ、これでもうすっかり安心。この家のネコになりますよ」
いったんはおとなしくしていたキティだったのですが、また脱走します。
再び脱走
「キティはどうやってもどるのでしょうか?」
「すべての動物が、一定の方向感覚をもっています。わたしたち人間の方向感覚はすごく低いレベルです。いっぽう、ウマの方向感覚はきわめてすぐれています。ネコはウマほどではないにしても、かなりすぐれた方向感覚があります」
「そして方向感覚が正しいかどうかを、つねに再確認していたのは鼻のにおいの記憶でした」
キティにとっての幸せとは
ぜいたくな食事や尊敬、地位、高貴な名前や血統書は、キティの気持ちとはなんの関係もありません。
キティの幸せは、夕暮れのたそがれどきに、そっと下町にくりだし、がらくたのあいだを調べてまわることでした。
訳者・ムササビ先生と読む「下町のネコ キティ」
の巻末がまたおもしろいです。
〈ネコは9回生きるってどういうこと?〉
英語のことわざで「ネコに九生あり」=ネコはなかなか死なない
という言葉があるそうです。それは・・・。
やっぱりおもしろいシートン動物記。こんなおもしろいお話を埋もれさせるのはもったいない。子どもも大人も読んで欲しい!ということでいろんな訳があり、映画、アニメ、マンガにもなっています。読み継がれていってほしい作品です。