芦田愛菜アニメ『岬のマヨイガ』不思議な世界の感動物語!

タイトルの『マヨイガ』は不思議な響きですね。聞いたことがあるようなないような。

迷い家(まよいが)

といい東北地方などに伝わる、訪れた者に富をもたらすとされる山の中の幻の家のことだそうです。

そのお話は

『ある村のある嫁さんが、蕗をとりに山へ入って、どんどん奥へ入っていくと、見たこともない立派な門が現われた。嫁さんは誰の屋敷だろう?と思いながらも門をくぐり、入っていくと、庭にはニワトリがたくさん放し飼いにされていて、赤と白の花が咲き、馬も牛も飼われていた。

「誰かいますか?」と声をかけても返事はない。屋敷へ入ってみると、火鉢の火はあかあかと燃え鉄瓶の湯はしゅんしゅんと沸いていて、赤や黒のお椀やお膳が並んでいた。「もしかして山男の屋敷かもしれない」と怖くなって嫁さんは急いで逃げ帰った。家に帰って家の人に話しても誰も信じてくれない。

それからしばらくして川で洗い物をしていると、川上からきれいな赤いお椀が流れてきた。「なんてきれいなお椀だろう」とひろってしまった。でも、ひろったものなんか使ったら家の人にしかられるかもしれない。そう思った嫁さんは、その赤いお椀はお米を計るときの入れ物として使うことにした。すると食べても食べてもお米が減らない。

家の人は「なんでお米が減らないんだろう」と不思議に思って嫁さんに聞いた。すると嫁さんは赤いきれいなお椀のことを話した。いつか見た山奥の立派な屋敷のお椀に似ていたとも話した。

すると家の人は「きっとその屋敷はマヨイガだ。マヨイガにあったら、その屋敷のお椀でもニワトリでもなんでもいいから持って帰るもんだといわれている。嫁さんは欲がなくてなんにも持って帰らなかったから、マヨイガが嫁さんにお椀をくれたんだろう」
とおしえてくれた。

それから嫁さんの家は栄えて長者様とよばれるようになった』とさ。

このお話は聞いたことがありました!

民俗学者 柳田國男 がまとめた「遠野物語」に収められているとのこと。

知らない家からものを盗んできたら、不幸になりそうなのに、良いことが訪れるなんて、きっと日頃の行ないが良いのかもしれません。

そういった人に見える家なのかもしれませんね。

 

柏葉幸子さんの作品

柏葉幸子さんの作品はずっと昔「霧のむこうのふしぎな町」を読んだことがあります。何気ない日々の生活からふしぎな世界へごく自然に連れて行ってくれるファンタジーだったと思います。おもしろくて一気に読みました。

次に読んだのは「地下室からのふしぎな旅」。これも“ふしぎな世界”へ連れて行ってくれる、読めば必ずおもしろい!と思わせる作品でした。

それからずいぶんと時が経ってしまいましたが、きっとまた“ふしぎな世界”へ導いてくれる本だと思ってワクワク期待しながら読みました!

すると2011年の東日本大震災を思わせるような描写から始まります。

ああ、柏葉さんもこのあたりだったんだ

と作者の経歴を思い浮かべました。

調べてみましたら、

岩手県宮古市生まれ、花巻市出身、盛岡市在住

とのこと。

ご本人が被災されたのか不明ですが、描写は胸に迫るものがあります。

 

原作

原作は

東京に夫と二人で暮らしていたゆりえさんが、暴力夫から逃げるためにあてもなく旅をした先が、狐崎という海のそばの街でした。

また両親を事故で亡くして叔父さんにひきとられることになった小学生・萌花ちゃんがおばさんと一緒に狐崎で電車を降りました。

子どもがいなかったゆりえさんは、萌花ちゃんのことが気になり、後をつけて同じ食堂に入ってウニラーメンを食べ終わったときに、あの大震災が起こりました。

なんとか無事に狐崎中学校の体育館に避難してきた、ゆりえさんと萌花ちゃん。
はたから見たら親子に見えたでしょう。
体育館では、いろいろ事情を聞かれることになりました。
「どうしよう」
と思っていたら、あるおばあちゃんが、
「うちの嫁だ!」
と言い出しました。

そのおばあちゃんは、わかっていてそんなことを言い出したのか、認知症なのかわかりませんでしたが、

ゆりえさんは、ゆいさんに。
萌花ちゃんは、ひよりちゃんという名前になって

このおばあちゃんと3人で暮らすことになったのです。

ゆりえさんは、おばあちゃんちの嫁ということにしておけば、夫が探しにきてもみつからないかもしれないし、この女の子・萌花ちゃんのおかあさんでいられるかもしれないと思ったかもしれません。

萌花ちゃんは、知らない叔父さんの家のこどもになるより、大震災のときも暖かく守ってくれた、この女の人の子どもになっているほうが良いかもしれないと思ったのかもしれません。

おばあちゃんは事情を汲み取って、自分ちの嫁と孫ということに仕立てたのかも知れませんし、本当に思い込んだのかもしれません。

ともかく、3人は吉井さんのおばさんの家だったという空き家を借りて住むことになりました。

その空き家は昔話に出てくるようなかやぶき屋根で、井戸もあり、納谷や鶏小屋もあります。家の中には囲炉裏もあります。

おばあちゃんは夜、寝るとき、昔話をしてくれました。

それは
「むがしむがしあったずもな」
という出だしで

「コレドンドハレ、ドンドハレ」
で締めます。

マヨイガのお話もしてくれました。

ある日の朝、おばあちゃんは
「客があるんだよ。いつもより多めに食料を買い込みたいんだ」
と買物の運転をゆいさんに頼みます。

そしてお赤飯、お煮染め、ホヤときゅうりの酢の物、カルボナーラ、デザートなどごちそうを作った夜、思いがけないお客様が大勢やってきました。

それは、河童たちでした。

当たり前のように「おはようござんす」
とおばあちゃんに挨拶をしています。

このように、昔話に出てくる登場人物が現代の日常生活にごく普通に登場してきます。

おばあちゃんは
「昔話に出てくるものでも、ホントにいるものはあるんだよ。お話の中のことですって、すましているだけなのさ」
と言って、マヨイガにも会いにいきます。

「マヨイガは山の中をうろうろしている家だから、今はどのあたりにいるのやら、さがさなきゃいけないんだよ」
と言って、他の家に
「知らないかね」
と言って聞いて歩きます。

そしてとうとう本物のマヨイガに出会えます!

お膳には炊きたてのご飯や焼きたてのお魚が盛り付けてあってスイカが冷やしてありました。

「きちんとほめんるんだよ」
とおばあちゃんがいいます。

こんなマヨイガがあったら、いいですね~。

そしてラストは、この土地に伝わる昔話上の空想だと思われていた一大事をみんなで戦って乗り越えるのです!

伝説上の架空の登場人物が次々と登場してくる物語。

不思議な世界です。

 

アニメでは

アニメでは、ある事情で家を出てきた17歳の高校生・ゆい役を芦田愛菜さんが演じます。

少しだけ原作とは設定が違いますね。

おばあちゃん役を大竹しのぶさん。

この映画は実写ではなくアニメで良かったと思います♪

絵もキレイですし、原作で味わった不思議な世界へ、アニメでも連れて行ってくれるでしょう!楽しみですね♪

映画
『岬のマヨイガ』
2021年8月27日公開

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