岩井俊二監督『ラストレター』〈小説と映画〉泣ける感動物語

映画「ラストレター」の公開前は
「ラブレター」と
よく比較されていました。

私もどちらの小説も読んでみて
「似ているな~」
とは思っていました。

「ラブレター」は女性が過去の想い人を忘れられない物語でした。

「ラストレター」は男性側が過去の想い人を忘れられない物語だと思っていましたが、映画を観てみて女性側もだったと気づきました。

岩井俊二自身の思いも含まれているのではないかと思うくらいリアルで男性の心理がよく描かれています。身につまされる具体的な感情の動き、表現はお見事です。細かい描写がうまいと思いました。

文章も読みやすく一気に読めました。

映画「ラストレター」は原作も監督御自身ですので、原作をなぞっていくのかと思いきや、細かいところは少し違っていました。

それを楽しみに原作を読むのもいいと思います♪

それに映像になるとやはり”色”がつきます。

広瀬すずさんを主演に

しかも二役を演じているわけですから

完全に広瀬すずさんの色がついた映画になっています。

それが映画の雰囲気を決定づけているように感じました。

 

小説『ラストレター』感想

まっすぐで純粋な愛を貫いている点は「ラブレター」に似ています。

そんな人が現実にいるのだろうか
小説だから存在できる?

高校生の時に好きだった女の子が
文章を誉めてくれ
「小説家になれるよ、君」
と言われたひとことで
小説家になることをこころざし
たいした芽も出ずにまだ小説家で成功することをあきらめずにいる。

長男でありながら定職にもつかずアルバイトでつなぎ、世間でいう当たり前の家庭を築き子どもを育てる

ということを出来ていない自分。

親には申し訳ないし自分も情けなくなり涙があふれる

といった葛藤。

妹には
「いい歳してアルバイト待遇では老後が
心配だ」
と会うたびに小言を言われ
村上春樹や東野圭吾のようにおもしろいのを次々書けるの?
ととどめをさされる。

「ラブレター」では描かれていなかった、中年男性の鬱屈とした思いが身に迫るように感じられます。20代、30代の若い人たちには理解できないかもしれません。

それ以上の年齢の人でも挫折を味わったことがない人、自信満々の人などには“女々しい男の愚痴”と感じるかもしれませんが。

またラストレターとはどういう意味なのか?

と思いながら読み進めました。

最初は
裕里が乙坂に手紙を出すたびに
「これで最後の手紙です」
と書くのだけれど
それでもまた書いてしまう。
何度も最後だと書いては出してしまう。

このことを言っているのかと思いましたが、きっと物語の一番最後、未咲がふたりの子どもに遺した最後の手紙『遺書』のことなのでしょうかね。

このラストは涙を誘います。

 

小説あらすじ

東京の“東京白鳩組”でアルバイトをしながら小説家で成功することを目指している44歳の乙坂鏡史郎(福山雅治)。

くすぶっている自分の人生をどうにかしないといけないと葛藤していたところ同窓会の案内状がきた。

高校時代に憧れていた鮎美の姿をひと目見たならば、それまでの作家生活に区切りをつけて別の仕事につこうと決意し故郷宮城県の同窓会に参加した。

ところがそこには鮎美(広瀬すず)ではなく妹・裕里(松たか子)が、鮎美のフリをして参加していた。

まわりの同級生たちは気づいていないようだった。

鏡史郎は気づいたが、裕里の嘘にしばらくつきあうことにし、帰り際にメールアドレスを交換した。

鏡史郎は裕里に
「僕にとっては君は永遠の人です」
「まだずっと君に恋しています」

と立て続けにメールを送った。
すると返信がこなくなった。

裕里の家では鏡史郎からのラブメールを夫の宗二郎(庵野秀明)が偶然見てしまい夫婦げんかが勃発。宋二郎は怒りにまかせてスマホを壊しまった。

スマホを壊されてしまった裕里は鏡史郎に返信できずにいたのだ。

そのかわりに裕里は手紙を送るようになった。

「もう手紙は書きません」
「手紙はこれで最後にします」
と書いてはいるが何通も送られてくる。

裕里が姉の鮎美の同窓会に行ったのは“鮎美の死”を伝えるためだった。

しかし会場の受付で鮎美に間違えられ参加することになってしまったのだ。

鮎美は阿藤(豊川悦司)と結婚しふたりの子どもをもうけていた。

阿藤は鏡史郎と同じ大学にいたが大学には在籍していなかったという正体不明の男だった。

阿藤と結婚した鮎美はDVを受け、ある日阿藤は家から姿を消した。それで鮎美は実家に身を寄せていたのだった。鮎美は病と闘いながら回復することなく命を絶ったのだった。

映画キャスト

岸辺野裕里
松たか子

岸辺野宗二郎
庵野秀明

岸辺野颯香
森七菜

岸辺野瑛斗
降谷凪

岸辺野昭子
水越けいこ
裕里の義母

波止場正三
小室等
岸辺野昭子の
学生時代の教師

遠野幸吉
鈴木慶一
裕里の父

遠野純子
木内みどり
裕里の母

遠野裕里
(高校生時代・回想)
森七菜

遠野鮎美
広瀬すず

遠野未咲
(回想)
広瀬すず

阿藤
豊川悦司
未咲の元恋人

サカエ
中山美穂
阿藤の同居人

乙坂鏡史郎
福山雅治

乙坂鏡史郎
高校生時代(回想)
神木隆之介

 

映画相関図

小説相関図

映画『ラストレター』

2020年1月17日公開

監督・脚本・原作
岩井俊二

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