内館牧子著『今度生まれたら』抜群におもしろい!ナイスキャスティングで映像化♪
内館さんは一時代を築いた人気脚本家です。2018年刊行の小説『すぐ死ぬんだから』は三田佳子さん主演でドラマ化され人気を博しました。
本書は書き下ろし作品ですが、抜群におもしろいです!
これも映像化されるんじゃないかと思っていたらNHKドラマになりましたね♪
NHK公式ページ
原作は、主役はあの女優さんが良さそうとか、夫役はあの俳優さんかな・・・などと想像をめぐらせながら一気に読みました。
通勤の行き帰りで読めちゃうほど(まあ通勤時間が長いというのもありますが)夢中で読みました。
キャストはイメージにぴったりの俳優さんたちでナイスキャスティングですね♪
主人公は
「私は昔から、忖度して本音を言わない」
という70歳の専業主婦。
主人公の言い分は、建前も本音もどっちも「わかる、わかる!」と共感してしまいます。
私もどちらかというと、人間関係を円滑にするためなら、本音でなくても相手が気分いいことを口にしておこうと思うタイプなので、とてもうなずけます。
目次
あらすじ
主人公・夏江は70歳を迎えた今、結婚生活に不満を抱いている。
「この人と結婚していなければ、別の人生があったんじゃないか」と。
夫とは職場結婚。
夫は同じ職場のエリート社員で、必死の思いで射止めた理想の男性だったのに、ある事件でエリートコースを離脱してしまい、退職。その後夫は驚くほどのケチになり、夏江の言葉には必ず否定から答えるという姿に夏江は失望する毎日。
自分はというと70歳になった今、なんの取り柄もないことに愕然とする。
「もしあのとき別の道を選んでいたら」と思い返しては後悔したり、「いや、良かったんだ」と自分に言いきかせたりの繰り返し。
しかし日頃から、夏江が納得がいかないことは
“人生100年時代“
と盛んにいわれ
『年齢は関係ない』
『まずは始めてみること』
『何かを始めようと思った時が一番若い』
などというシニアを励ます正論。
「それは違うのではないか」と夏江は思っている。
更にシニアが奨められるのは
・学校に入り直す
・ボランティアをやる
・各種の資格・検定を取る
・まったく新しい趣味を始める
などということ。
高齢者は趣味やボランティアやカルチャー以外に残りの人生の役立て方はないのだろうか?
「やっぱり、仕事をもたなくてはダメだ」
と夏江は行動を起こす。
かつての女性の幸せとは
内舘さんが二十代の頃は、結婚して始めて「一人前」だったそうです。
さらに子どもを産んで「盤石の一人前」だった。
女性にとって幸せとは男性から与えられるもの。
だからより稼ぎのよい将来エリートになりそうな男性を射止めようと必死になっていた。
女性の学歴は理想の結婚をするためには邪魔だった。できる女は不利だった。
女性は外で働くよりも舅や姑に仕え見送る。夫をもりたて、一人で子育てする。
少しバカで涙もろくて料理がうまい女性が男性の理想だった。
社内結婚をした男性社員は、「会社の備品を持ち出した」と言われた。
だからエリート男性社員は社内の女性社員とおつきあいをしても上司からの見合い話があれば乗っかり、結婚してしまう。振られた女性社員は静かに退職していった。
女性はほぼ全員が結婚退職だったため、振られて辞めて行く女性社員は、それはみじめだった。
ということが本書に書かれています。
当時の価値観に驚きの連続です。
「そんな時代があったのか~」
と。
そこがおもしろい!
内舘さんのエッセイにも書かれていますね。
内舘さん自身がその時代を過ごしてきたのですからより真実味があります。
しかし、より以前の女性はもっと差別を受けていたでしょう。
今は男性が赤ちゃんを抱っこしている姿をよく見かけます。
「いい時代になったな-」と思います。
理想の結婚をした老後
理想の結婚をして70歳になった専業主婦の心境は思いもかけないものでした。
必死になって最高の幸せをつかんだはずだったのに。
そして人生100年時代だからといって、何歳からでもやり直しはきくとか、新しい人生をとかいわれる。
それは違うのはでないか?
内舘さんが思っていることを主人公を通して訴えているのでしょう。
「人間は幾つになってもやり直せる」
というのは具体性のない励まし。
やっぱり体力、気力、身体的能力など、若い頃とは違ってくるでしょう。
そこに目を向けないで、一束にハッパをかけるのはいかがなものかと。
政府の思惑
年金受給が引き上げられています。
『ねんきん定期便』には65歳からもらう金額と70歳からもらう金額のグラフが掲載され、大きな差額が提示されています。
“70歳からもらったほうが、こんなにお得なんですよ~”と。
“政治家は60歳ではまだまだ若い”
と言われる世界ですけれど、一般人はそうはいかない。
少しでも年金受給を遅らせようと、『人生100年時代』を国民にすりこませようとしているように思えてなりません。
仕事をもつ意義
社会に必要とされる仕事を持っているからこその趣味だと内舘さんは小説の中で主張しています。
趣味だけじゃダメですか?
と思うのは、私がまだその年齢に達していないからでしょうか。
その部分が理解できないのですが、いずれわかるものでしょうか。
心にとめておきたいと思います。