林真理子『奇跡』賛否両極端!読んでみないとわからない
林真理子さんが得意とする富裕層と歌舞伎を題材にしているということで読んでみました。
読み終わってからネットのレビューを見てみたら感想は真っ二つに割れていることに驚きました。いろんなとらえかたがあるのですね。
大絶賛している人もいれば、酷評している人もいます。これだけ振り幅が大きいというのも人気作家たるゆえんでしょう。
これはもう「読んでみなければわからない」ということでしょう。
購入した人の中には「買わなきゃよかった」と憤慨している人もいましたが、迷っているならば図書館で借りて読むことをお勧めします。
目次
内容
元歌舞伎役者の妻・田原博子さんと写真家・田原桂一さんが恋に落ちて一緒に人生を歩む足跡を書いた物語です。
それがお互いに籍を入れている別の相手がいながらのことだったので、いかに大変だったか、いかにお互いの愛が深かったか、林さんが双方を褒めたたえながら、田原博子さんの手記を交えて書かれています。ご自身も書いている世界に酔いしれながら書いたのではないでしょうか。
このたたえっぷりが「これでもか!」というくらいの誉めたたえぶりなので、物語の評価がわかれる一因にもなっています。
忖度
依頼主の田原博子さんが御存命なので、かなり気を使って書いていると思われます。故人だったら林さんお得意の想像力を膨らませ、ピリリとした辛口やちょっとしたイヤミをいれたんじゃないかなと思います。
そういうのがないと物足りない感じがします。
喧嘩
田原桂一さんが建築デザインの会社経営に精力を傾けるようになった頃から激しい喧嘩が増えていったと書かれています。
唯一もめごとが書かれている点ではないでしょうか。
「あ、やっぱ喧嘩してるじゃん」
と思いました。
これが「一度も喧嘩さえしたことがなかった」というのなら
ほぉー。。。
と感心するのですが。
喧嘩においても林さんの表現力が素晴らしい。
二人の個性が強かったために愛も深く燃え上がった。それだけにぶつかり合うときは半端ではない。二人を羽交い締めにして収まるくらい。しかしどれほど激しくやりあっても別れ話になることはなかった。
お互いのことを強く思っているからぶつかる。そのぶつかり合いも愛の形だった。
と、あくまでも、褒めちぎっているのです。
「奇跡」とは
辞書を引くと
奇跡=常識では理解できないような出来事。
とあります。
世の中の多くの人は大きな不満を持ちながら結婚生活を続けている。仲がいい夫婦もいるがそれは家族愛だ。
そんな中で、不満もなく「愛された自分が幸せだった」と自慢できることが「奇跡」なのだと思います。
なので、この本のタイトルは合っているといえると思います。
「なぜ書いたの?」
レビューで酷評だった人の多くが問いかけていること。
「どうしちゃったの?」と。
私はこう思います。
✔ 林さんが大好きな歌舞伎の世界だったから。
✔ 富裕層はご自分もそうなので得意分野だから。
✔ そこにネタがあったから。
✔ 頼まれて断れなかったから。
本書には何度か田原博子さんとはママ友だったけれど、地味な存在に見え、それほど親しくなかったといった内容が繰り返し出てきます。
それは田原博子さんと林さんとの関係、林さんの本心が暗示されているように感じました。
感想
きれい事を並べ、これでもか!という賛辞の文章力はさすがだと思いました。
私は途中でやめようと思いましたがなんとか我慢して最後まで読みました。
大絶賛している人もいるので、自分に合うか合わないかは繰り返しになりますが読んでみないとわからない。
自分がどっちのなのか、賭けたい方は購入を、読んでみたいけどお金を出してまで買うにはどうかと思う人は図書館予約を。