本『人生のやめどき』しがらみを捨てて楽になる!樋口恵子&上野千鶴子

いろんなやめどきをテーマに大学教授のお二人が対談した内容を収めた本です。

ひとり娘をもち、夫を見送った樋口さん。

独身で子どものいない上野さん。

樋口さんは上野さんより16歳も上です。対談の中でも世代の違いがあります。

私よりもずっと年上の上野さんの世代観と、更にずっと年上の樋口さんの世代観、つまり3世代の価値観を考えながら読み進められるところがおもしろかったです。

また本の構成が素晴らしいのでしょうね。

関心事を細かく区切って、簡潔にまとめている。

樋口さんも上野さんも、お互いを気遣いながらも、違う意見のところはピシっと述べる。お互いの反対意見を認めて、会話をすすめていく。そこがいいですね。

人生の大先輩の考えを目の当たりにでき、参考になりました。

私も、お二人とは違う意見だなーと思う箇所もありました。違ってもなんの問題もないでしょう。正しい、間違いではなく、人生の先輩の意見を聞いて自分の考えを整理する

そんなひとときになる、おすすめの本です♪

 

上野千鶴子さん

病院で亡くなることが多くなった現代において、独り暮らしであったとしても自宅で最後をむかえることを主張している方だと耳にして興味を持ちました。

東京大学の入学式の祝辞で世間を賑わせた方だったのですね。そのときのニュースは印象に残っています。勇気のある変わった方だな~と思いました。

現在は赤毛が印象的です。

児童文学作家の角野栄子さんも赤に近いピンクを常に身につけてらっしゃることを思い出します。高齢に近づくと“赤”は特に元気をくれる色なのかもしれません。

私の母親も若い頃から赤好きでしたが、晩年は特に赤にこだわり、上から下まで赤を身につけ心配したほどでした。

 

 

樋口恵子さん

現在、東京家政大学名誉教授で、フリーで評論家をなさっている方です。

女性の働き方や親子に関しての著書を多数書かれています。

 

 

以下、印象に残った箇所です。

老後はどこでむかえるのがベストか?

親が老後、子どもと同居する場合、最後は親が施設などへ送られ、出て行くことになるのが現状。

お年寄りの親をひとり実家において子ども夫婦が実家を出て行く「親を置き去り」と、親を施設に入れるのとどっちがむごいか

上野さん
「施設に入れるほうではないか。お年寄りが『家にいたい』というのと『家族と一緒にいたい』というのは別なことだと私は確信しています。親が出て行く理由はありません。家にいましょう

樋口さん
「行きたくなるような老人ホームをつくってほしい。老人ホームがハッピーランドになるように」

 

 

クラス会のやめどき

上野さん
「親戚、近所、クラス、法事、全部やっていません!」

樋口さん
「80代後半は生活の彩りが何もなくなってしまう。その中でなにかあるというのが面白い」

これは性格の違い、世代の違いがあるかもしれませんね。80代後半になるとなにかあるというのが面白いから出かけてしまうというのは想像できますし納得できます。

 

 

お見舞いのやめどき

樋口さん
「お見舞いって絶対的に“上から目線”なのね。見舞われる側を考えると躊躇してしまう。だからまず“行ってもいいか”と手紙を出しOKをもらってから行くようにしている」

これは目からウロコが落ちる思いでした。

『お見舞いって絶対的に“上から目線” 』なのですね!

お見舞いって家族以外はすごく気を使いますよね。相手にも気を使わせてしまうと思うと躊躇してしまい、結果後悔したこともありました。

手紙も良し悪しで、そばに手伝ってくれる人がいる環境ならばいいけれど、そうでないと手紙も負担になりかねない。

難しい問題だなと思います。しかし行ける限りやめどきはないのかなと思っています。

 

 

会葬のやめどき

友人知人が亡くなったとき、その人とお別れがしたいと思って足を運んでも遺族とは初対面ということがありますね。亡くなった人が遺族に自分の話をしてくれている場合は「よくお話は伺っています」などとお話ができますが、そうでない場合は、来てよかったのかなと思うかもしれません。

樋口さん、上野さん、共々
できるだけ都合をつけて行っていたそうですが、会葬のやめどきは体力に決めてもらう。
という結論でした。

 

 

仕事のやめどき

橋田壽賀子さんが「仕事が来なくなったら安楽死したい」と言っていたのには「自分のやっていることに社会的なニーズがなくなったら生きている意味が無い」という意味が含まれているそう。

上野さん
「社会的ニーズのない人生を送っている人は、世の中に山ほどいますよ」

樋口さん
「全盛期の長かった人は、そう思うのかも」

経済的に余裕のある人は、仕事のやめどきは注文がこなくなったとき。

経済的に働かざるをえない人は倒れるまで働く。

ということになりそうです。

おもしろかったのは、樋口さんが
「日本の戦後経済が完全に復興する前で、女子のパートタイマーを安く使おうという悪知恵が日本企業に定着する前だった(から学研に正社員として雇用された)」
という言い方。

確かに!悪知恵ですね。

 

 

料理のやめどき

どんなに料理好きでも、年をとると、料理を作るのが億劫になるとか。

年金生活になったら、毎食お総菜を買う経済力はないかもしれません。しかしそんなに食べなくてもいいくらいになりそうなので、1食は買ったお総菜で栄養をとり、あと1~2食は軽く口にするということになるのかな~と想像しています。でも毎食完璧な食事を要求する家族がいたら、大変ですね。

夫のために毎回律儀においしい料理を作って日記まで残した女優・沢村貞子さんは、すごいですね。

将来は今よりも安くて健康的なお総菜が手に入る時代になっていてほしいです。

樋口さん
「老人は飲食店に恵まれた駅から近いところに住むべきだというのが、最大のアドバイスです」

同感です!あと病院やスーパー、薬局など、老人こそ街の中、街に近いところに住むべきだと私の親も口酸っぱくいっていましたね。

 

 

おひとりさまのやめどき

樋口さん
「新聞の相談事で90歳近いお父さんが病気になって手術すると助かると言われ、本人も息子3人も手術を希望した。けれどもお母さんだけは『これ以上長生きされたらかなわいからやめてほしい』と言ったという」

衝撃的なお話!

お父さんと3人の息子ですから男所帯。お母さんの日頃の負担は、そんな発言が出てくるほどだったのでしょう。手術後、お母さんが負担にならない体制をつくることが大事ですね。

 

 

人生のやめどき

女性学者の駒尺喜美さんが
「自分の目の黒いうちに、区別が差別に昇格するとは思わなかった」
と明言をおっしゃった。

男と女はまったく別の生き物だから比較することすらムダだと思われていたのが男女の「区別」。

それがあってはならない不当な「差別」に変わった。

それを駒尺さんは「昇格」と呼んだ。

とのこと。

まさに明言ですね!

 

 

終活のやめどき

樋口さん
「人はあれもやりたい、これもやりたいと思いながら死ぬ。長生きすると、未練も深くなる。最後までしたいことが残っていることは素晴らしい。これこそ成功した人生」

〈ヤマザキマリ対談集より〉
養老孟司氏「90歳になっても『長生きしたい』という人は、いままで何してたの?!」と思う。必然性のあることをやってこなかった(本気で生きていなかった)から」

樋口さんは、死ぬときにやりたいことが残っている死に方が成功した(充実した)人生だといえるのではないかと。

養老孟司さんは、逆に本気で生きてこなかったから未練が残るんだと批判的です。

それぞれの考え方があるのですね。