ヤマザキマリ対談集 『ディアロゴス』運動とオリンピック、兼高かおる

代表作・漫画『テルマエ・ロマエ』で知られるヤマザキマリさんの対談集です。

対談相手は

養老孟司、竹内まりや、中野信子、釈徹宗、棚橋弘至、パトリック・ハーラン、中村勘九郎、平田オリザ、萩尾望都、内田樹、兼高かおる

多岐にわたる分野の著名人との対談です。

内容は
「そもそも人間にとっても運動とは何なのか、なぜ人間は運動するのか」
という疑問が発端となって企画されました。

そのため、どの人とも「運動」について語っています。

またヤマザキマリさんがオリンピックを題材にした漫画『オリンピア・キュクロス』を連載中で、オリンピックに大変詳しいということと、対談が東京オリンピックを目前にした時期だったこともあってか、オリンピックの話題、見解も話し合われています。

 

 

兼高かおるさん

例外が、最後に掲載されました“兼高かおる”さんとの対談です。

兼高かおるさんは2019年に90歳で亡くなっています。対談は2016年に行なわれました。この対談だけ、主旨は別だったのでしょう。運動やオリンピックの話ではなく、テレビ番組『兼高かおる世界の旅』のお話が中心です。

ヤマザキマリさんのお話や本によく出てくる『兼高かおる世界の旅』。
幼少のころ、多大な影響を与えた番組で、ヤマザキマリさんの人間のいくらかは兼高かおるで構成されていると言ってもいいくらいと言い切るくらいの大ファンぶり。

対談が叶ったのは、さも嬉しかったでしょう。

対談内容にも、嬉しさがあふれています。

私も『兼高かおる世界の旅』は憧れでしたので、読んでいておもしろかったです。

兼高かおるさんは小さい頃、母親に「贅沢は敵ってどういう意味?」と聞いて困らせていたようです。

戦時中は「贅沢は敵だ」と言われていましたからね。

しかし90歳近くなっても
「いまでも贅沢の意味がわかりません」
とのこと。

最後までお嬢様だったのですね。驚きました。

 

 

ヤマザキマリさんの疑問

ヤマザキマリさんが抱く素朴な疑問がかわいらしいです。

たとえば
「不思議なのは、私が丸1日かけて豪邸の雑巾がけを必死にやっても誰も拍手しないのに、マラソンみたいに決められた距離を一生懸命走る人に対して、人々は大きな声援を送るじゃないですか」

雑巾がけとマラソンを比べる発想がおもしろいですね。

 

 

「なぜ日本のニュースの半分ぐらいは運動なのか。みんなそんなに運動が好きなのか」

確かに。半分はいいすぎですけど、年々スポーツ報道の時間が増えているのは言われてハッとしました。

 

 

「日本人の選手は『金メダルを獲れなかった』といって泣いたりします。ヨーロッパのメダリストには『医学生や弁護士をやりながら片手間に運動やったら、オリンピックの選手になっちゃって、しかも金メダル獲れちゃった、ラッキー!』みたいな人がたくさんいて、その横で銀メダルの日本人がうなだれている。このテンションに違いはなんだろう」

銀メダルだって立派です。うなだれることはないのにと私も思います。

 

 

「運動にはまる人の気持ちを知りたくて、10キロのマラソンに出たことがある。2キロ地点で死にそうになったけど、頑張っていたおじいさんの後についていったら完走できた。その間にランナーズハイみたいなのがきたのがわかりました。途中から苦痛が感じられなくなったんです。不思議だった」

ランナーズハイを経験してみたいと思うなんて変わっていますね。

しかも体験してわかったというところも、おもしろいですねー。

好奇心旺盛なのですね。

ヤマザキマリさんの発想は、意外性があっていつも驚かされます。だから誰も思いもつかなかった『テルマエ・ロマエ』のような奇想天外な漫画を描けるのですね♪

 

 

心に残った言葉

劇作家の平田オリザさんの
「子育て中の女性が『この街に住みたい』と思う基準のひとつが図書館です」
の発言。

なるほどー!と同感です。

ヤマザキマリさんもイタリアで子育てをするか考えたとき日本に帰る決め手となったのは、母親が住んでいる北海道の街にいい図書館があるということとちょうどいい公衆浴場が近くにできたことの2つだったそうです。

私も図書館は重要です。

今住んでいる街は、感じが良く利用しやすい図書館が通える範囲内に複数館あるので、満足度が高いです。図書館が利用しづらいところだと満足度は格段に下がります。

 

 

また小津安二郎監督
「どうでもいいことは流行に従う。大事なことは道徳に従う。芸術のことは自分に従う」
との言葉。明言ですね!

 

なかなか読み応えのある、楽しくおもしろい対談集でした♪

 

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