ミュージカル「ケインとアベル」登場人物、原作のあらすじ、感想♪

小説「ケインとアベル」は
文庫本で上下2冊。
なかなか読み応えのある作品です。

どんな作品なのでしょうか。

ケインとアベルはまったく同じ日に生まれました。

それは1906年4月18日。

第一次世界大戦の直前。

ところが生まれた場所、境遇が違いました。

対極にあるといっていいかもしれません。

この二人が出会い、お互い憎しみ合う人生を送ります。

なぜ憎しみ合うことになってしまったのでしょうか。

この憎しみはいつまで続くのでしょうか。

 

原作者

原作者はジェフリー・アーチャー。

1940年生まれのイギリスの政治家、小説家です。

株で騙され、全財産を失い、子供のミルク代を稼ぐために初めて書いた「百万ドルをとり返せ!」が大ヒットし借金を完済したという、たぐいまれなる才能の持ち主です。

 

 

「ケインとアベル」は三作目

「ケインとアベル」は1979年に発表されました。

日本では1981年に初お披露目。令和5年現在で63刷です!

驚異的な大ヒット作品です。

なぜこんなにも支持されるのでしょうか。

まずは、とても読み応えのある作品だということです。

構成が素晴らしく、登場人物もよく考えられています。

 

 

ミュージカルに

原作は大ヒット小説。

登場人物も際立っています。

物語の起伏も激しい。

そこでミュージカルにできる!と判断されたのでね。

日本が初演って素敵ですね!

 

 

主役

ミュージカルの主役は、ウィリアム・ケインです。

原作からすると、ダブル主演でもよいように思います。

アベルを描いている部分が長く詳しいですし、最後はアベルが生き残るので、どちらかというアベルという気もするのですが。

 

 

 

音楽

フランク・ワイルドホーン

代表作は「ジキル&ハイド」。ブロードウェイで4年間上演されました。

ミュージカルはやっぱり曲が命!

 

 

登場人物

発表されているミュージカルの登場人物を原作でどのように描かれているかご紹介します

ケイン:松下洸平

スマートで都会風の頭の切れる銀行マン。
決意したことを着々と目標に突き進んでいきます。
ケインも少年の頃の成功体験が強みなのでしょう。
エリートなりの苦労を重ねます。

 

アベル:松下優也

しつこい執念の持ち主です。
一度食らい付いたら離れないスッポンのようです。
なぜこんなに激しい復讐心を燃やすのか。
それは悲惨な少年時代が大きな影響を及ぼしているからでしょう。
だからこういうアベルとなったのだという裏付けのために作者も力を入れています。
アベルの物語を描いているページはケインより多く割いています。
またアベルのわらしべ長者のような成功体験も「あきらめない」性格の一部を形成していると思います。

 

ヘンリー・オズボーン:今拓哉

詐欺師。
お金にだらしない。
お金をもらえる人を見極める嗅覚が鋭いのでしょう。
うぬぼれて屋で自分がデキる人間だと思い込んでいる。
だから失敗したときは自分の非を認めず相手のせいにする。

 

 

デイヴィス・リロイ:山口祐一郎

人の好いアバウトな経営者。
従業員が儲けに搾取していたことに気づかない。
事業失敗を機に自殺してしまいます。

 

フロレンティナ:咲妃みゆ

アベルの育てられた家の長女の名前。アベルは姉のように非常に慕っていたため自分の娘にも同じ名前をつけました。
アベルの一人娘。ケインの一人息子と駆け落ちします。
ケインの七光りを嫌がり、デパートのいち売り子から仕事を始め才覚を表します。
商才があり、ブティック系のお店を次々と成功させます。

 

ザフィア:知念里奈

アベルの妻。
同じポーランド出身。
結婚してしばらくするとアベルに愛情がなくなり離婚を切り出します。
アベルも愛情がなくなってしまい、離婚します。

 

ケイト・ブルックス:愛加あゆ

ケインの妻。
ケインの銀行の顧客。
未亡人でした。

 

ジョージ:上川一哉

アベルがアメリカ行きの船の中で知り合って親友となりました。
のちにアベルの片腕となって事業を支えます。

 

マシュー:植原卓也

ケインの学生時代からの親友。
同じ銀行で働くが急に自暴自棄になってしまいます。
実はホジキン病にかかり、余命いくばくだったのです。
若くして亡くなります。

 

リチャード・ケイン:竹内將人

ケインの一人息子。アベルの一人娘と駆け落ちをします。

 

 

アラン・ロイド:益岡徹

ケインの名付け親。
ケインの父親が勤めていてのちにケインも勤める、ケイン・アンド・キャボット銀行の頭取。

 

 

あらすじ

生まれた場所、境遇

ウィリアム・ケインはボストンで誕生。家は祖父の代よりの銀行家。上流階級。父リチャードはすぐに名門セント・ポールズの校長に連絡し1918年の入学許可をとりつけるほど。ケインは生まれたときから銀行家となるべくレールを敷かれます。

アベルはポーランドで誕生。生みの母は森でアベルを生みそのまま亡くなります。夕食の兎を狩るため森にいた少年が親子を発見しへその緒を切って家へ持ち帰ります。そのおかげで貧しい8人の家族は夕食抜きになってしまいます。

すぐに死ぬと思われていたアベルは、しょっちゅう病気になって死にかけましたが生き長らえます。ヴワデクと名付けられコスキェヴィチ家の貧しい家族の一員となります。

社会主義国家のポーランド。
民主主義国家のアメリカ。

銀行家の裕福な家。
貧しい家族に引き取られた孤児。

対極の生まれ、育ちですね。

 

 

幼少のアベル

勉強ができたヴワデクは近所に住むロスノフスキ男爵に引き立てられます。息子レオンの勉強相手として姉のフロンティナと一緒に男爵の屋敷に住み込むことになります。

しかし1915年、ドイツとオーストリア・ハンガリー帝国の戦争の影響でロスノフスキ男爵の屋敷はドイツ軍に占拠されてしまいます。レオンは殺害されヴワデクとロスノフスキ男爵、その使用人たちは地下牢に閉じ込められます。

非凡のヴワデクはわずか9歳にして地下牢を仕切る存在となります。24人の使用人をグループ分けし食事と運動、寝る、光にあたるなど交代制を作り上げます。12歳になったヴワデクはロスノフスキ男爵より全財産と銀の腕輪を遺贈されます。ロスノフスキ男爵は力尽きて亡くなってしまいます。

ある日、全員地下牢から地上の芝生に出され裸になって川で体を洗うよう命じられます。姉のフロンティナはドイツ兵に犯され殺されてしまいます。その後、ヴワデクたちは鉄道で移送されロシア第201収容所へ入られます。移送される道中のケンカでヴワデクは刃物で足を刺されてしまいます。その治療のため医務室へ通うようになったヴワデクは老医師より脱走の手助けを受け脱走に成功します。

 

 

幼少のケイン

ケインは銀行家の父のもと恵まれた環境で育ちますが、父リチャードがタイタニック号沈没の犠牲者になってしまいます。7歳になると祖母たちより金銭的な教育を受けます。もらったおこづかいから投資をし、寄付をし、収支明細報告書をつける日々を21歳まで続け銀行家としての才能を開花していきます。

ケインの母アンは青年実業家のヘンリー・オズボーンを紹介され再婚します。しかしヘンリーはアンから幾度もお金を借りたため、アンの遺産はどんどん目減りしていきました。そんな中アンのもとにヘンリーが浮気しているという手紙が何通もきたため、やむを得ず探偵へ調査を依頼。結果ヘンリーは経歴詐称、名前も年齢も嘘で前科もあることがわかります。ショックを受けたアンは生きる気力をなくし流産したうえに亡くなっていまいます。

 

 

少年のアベル

脱走したヴワデクはモスクワ行きの列車に乗りある親切な婦人と出会います。モスクワの婦人の家へ行きほどこしを受けますが夫に大反対され婦人の家を追い出されてしまいます。ヴワデクはオデッサへ行き浮浪児ステパンと出会い盗みで生計を立てます。しばらくするとトルコ行きの船が出ることを知り石炭部屋へ隠れてネズミの襲撃に三日三晩耐えなんとかコンスタンチノーブルへたどり着きます。

しかしあまりの空腹からオレンジを盗んでつかまってしまいます。罰として恐ろしいイスラム式の刑を受けることになり手首を切断される寸前、ロスノフスキ男爵より遺贈された銀の腕輪がズレ落ち手首で光ったのを見た観衆の中のイギリス人が助けてくれます。その人の紹介でポーランド領事館で18カ月働いたのち、アメリカへ渡ります。入国審査の際、ヴワデクは本名を名乗らず銀の腕輪に彫られていたアベル・ロスノフスキ男爵から名前を拝借しアベルと名乗るようになります。

 

わらしべ長者?!

最初は船で知り合ったジョージのおじさんのパン屋で働きます。しかし低収入で環境も悪かったため、週に6日で9ドルの肉屋の店員に転職しました。更にプラザホテル給仕に転職し週25ドルも稼ぐようになります。

そのうえ、アベルの仕事ぶりを気に入ったリッチモンド・ホテル・グループのデイヴィス・リロイにスカウトされ週40ドル、売上増の10%の副支配人となります。

そこではデイヴィス・リロイの友人だからと高を括っていた支配人の不正が横行し利益が盗まれていました。アベルはデイヴィス・リロイに直談判し支配人を解雇し自分が支配人となるのです。

>まるでわらしべ長者のような出世ぶりですね!

 

二人の出会い

しかし不況の波が押し寄せ市場の多くが大暴落。デイヴィス・リロイも破産してしまいます。このままだとホテルグループが銀行の手に渡ってしまう。デイヴィスをなんとか助けたいとアベルは銀行へ連絡し交渉しようとしました。しかしその時対応した銀行員ケインにけんもほろろに袖にされてしまいます。翌日の夕方アベルはデイヴィスと二人きりで酒を交わしますが、その翌日デイヴィスは自殺をしてしまいます。

銀行の援助さえあれば苦境を乗り切れたのにとアベルは冷たくあしらわれたケインに恨みをいだき必ず復讐をしてやると固く誓います。

ケインはケインで、自分たちの不幸をあくまでも銀行のせいにして一方的に恨み言をいうアベルに腹が立っていました。その反面、銀行の判断で彼を援助できなかったことを気の毒に思う気持ちもありました。

>ここから二人の対決は始まります!

追い打ちをかけるようにリッチモンドホテルは火事で丸焼けになってしまいます。それはアベルに解雇された元支配人デズモンド・ペイシーの恨みによる犯行でした。アベルとの共犯の疑いがないと判断され保険金が下りることになりますが、その担当の保険屋がヘンリー・オズボーンでした。

二人はケインを恨んでいることで意気投合。

そんな中、どん底のアベルに朗報が訪れます。

ある人が匿名を条件にアベルを好条件で援助してくれることになったのです。アベルはホテルを手放さずにすみ、持ち前の才能でどんどん利益をあげホテル業界で大成功します。

ケインも苦労の末、念願の銀行頭取になります。

 

 

アベルの復讐劇

アベルはケインを頭取の座から引きずり降ろして絶望を味あわせたかった。友人デイヴィスがどんな気持ちで飛び降り自殺をしたのか、ケインがどんな冷たい仕打ちをしたのかわからせたいと思っていました。

そのために手始めにケインの銀行の株を買い始め、ケインを不安にさせます。それにヘンリー・オズボーンがアベルグループの取締役に任命されたこともケインにとっては非常に気になることでした。

 

 

戦争へ

そんな中、二人とも戦争へ行きます。

戦火の中、ケインは「もう助からない」と見放されるほどの瀕死の重傷を負います。看護を担当していたアベルはケインと知らずに助けてあげ、更にケインが生き延びることを祈るのです。

 

 

戦争から戻る

戦争から戻るとアベルはケインを頭取の座から引きずり降ろそうと画策します。ケインの銀行の株を買い続けたり、ダミー会社の株を高値で売って底値で買ったりし、アベルの個人的な復讐のために銀行が振り回されケインを悩ませます。

執拗なアベルの攻めにケインも手を打ちます。それはアベルが14の州で17件の贈賄容疑で告発されるよう司法省へ書類を送ったのです。アベルは逮捕されますが「ケインのしわざだ」と確信します。

このように二人は常にお互いの影を感じ意識せざるを得ない人生を歩んでいきます。

 

 

アベルの逮捕劇

アベルの逮捕に絡んでいたのがヘンリー・オズボーンでした。彼は相変わらず借金まみれの暮らしでした。アベルのグループ会社の取締役にさせてもらっても、アベルに金を無心に来ます。それでも足りなかったのでしょう。自分の借金返済のためにケイン側に情報を売ったのでした。そして最後は自殺を図ります。首を吊った紐はかつて自分が詐称したハーバード大学のネクタイでした。最後まであこがれをいただき続けたということでしょうか、それとも最後まで見栄っ張りだったということでしょうか。

ヘンリー・オズボーンが自殺したことでアベルは司法取引を持ち掛け罰金と執行猶予つきで戻ってきます。

ケインは個人的な復讐のために銀行を振り回したとして頭取の座から引きずり降ろされてしまいます。

 

 

子供たちの結婚

アベルの一人娘・フロンティナとケインの一人息子・リチャードが出会い、恋に落ち、駆け落ちしてしまいます。
二人とも子供の結婚には大反対。しかしどんなに反対されても子供たちは親から離れて家庭を築き幸せに暮らします。

フロンティナはアベルの血を引いてか商才を発揮し次々と自分の店を出店し成功していきます。リチャードも最初はサラリーマンをやっていましたが、のちにフロンティナを補佐する仕事につきます。

フロンティナが新しいブティックを開店します。ケインはブティックの様子を見に出かけます。そこでアベルを見かけます。手首の銀の腕輪からわかりました。二人は会釈をし合います。

その夜、リチャードが結婚後初めてフロンティナと子供を連れてケインに会いにくる約束でした。家に帰ったケインはみんなに会えることが待ちきれませんでした。椅子に座ってこれからおとずれる幸せな瞬間に思いをはせたまま、亡くなってしまいます。

 

 

驚きの結末

アベルのもとに1通の手紙が届きます。その内容は驚くべきものでした。
それは、デイヴィス・リロイが破産し自殺、リッチモンドホテルは火事で丸焼け、ホテルグループがアベルの手から離れるかと思われたとき、救いの手を差し伸べ、匿名で援助してくれたのは、ほかならぬケインだったというのです。

もしアベルの方が先に亡くなっていたら、真実を知らずに終わっていた。けれどもケインが先に亡くなった場合、この手紙をアベルのもとに送るように元アベルの取引先銀行の支配人カーティス・フェントンが遺言していたとのこと。

ケインは銀行の方針と立場上、アベルの融資の申し入れを断らざるを得なかった。しかし個人的にはアベルの商才と可能性を確信し援助したというのです。

それを知らずに復讐心を燃やし続け、ケインをやりこめることに一生の大半を賭けていたアベル。

アベルは、大切に持ち続けてきた銀の腕輪をケインと自身の孫・ウィリアム・アベル・ケインに遺贈するのでした。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

ケインもアベルも波乱万丈の人生でしたね。

一読では難解の原作をうまくミュージカルに仕上げていました。

若さあふれるキレッキレのダンス!

遜色ない歌

よどみないセリフ

初演と思えないほど完成度が高かったと思います♪

 

2025年1月22日~2月16日

東急シアターオーブ ミュージカル『ケイン&アベル』