映画『英国王のスピーチ』吃音症に悩む国王の克服ドラマ

現在のイギリス連邦王国の君主エリザベス2世の父親である、ジョージ6世の吃音(きつおん)症を克服する過程と人間ドラマを描いた歴史映画です。

吃音症とは、スムーズに言葉が出てこなかったり、どもったりする症状のことです。

 

日本の有名人では、政治家の田中角栄が吃音症で知られています。幼い頃に感染症のジフテリアにかかった後遺症が原因とされていて、浪花節を練習することで克服したといわれています。

 

ジョージ6世の吃音症の原因は

・利き腕を左利きから右手に無理矢理強請させられた

・寝るときにX脚の矯正器具をつけられ激痛に耐えなければならなかった

・厳しい乳母のしつけにより、言われたことが出来なければ食事抜きだった

などの幼い頃のストレスではないかと推測されています。

 

 

人々のトップに立つ者は、演説をする機会が多く、演説によって評価されてしまうところがあります。演説が雄弁なほうが、断然有利です。

ドイツのヒトラーも演説が巧みで人々を扇動したと言われていますね。

しかし、トップの立場だからといって、必ずしも演説が得意な人ばかりではありません。不得意な人は出来れば演説はしたくないでしょう。

また録音して何度もやり直して、うまくいった演説を流すということが出来れば良かったのかもしれませんが、それは許されなかったようです。

いまでも政治家の演説は、原稿を見て読むだけだったとか、原稿を見ないで自分の言葉で話したとか言われていますし、何回下(原稿)を見たのかと数を数える報道番組もあります。

それだけ演説が重要だということなのでしょう。

 

 

映画は、吃音症に苦悩するジョージ6世をプライドが高くかんしゃく持ちに描いています。この人柄が正しいかわかりませんが、そばにいて根気強くささえる、妻のエリザベス妃。

大人の対応で王家だからといってへつらわず対等に接しようとする療法士のライオネル・ローグ。

結婚のために国王の座を早々に退位してしまう、兄のエドワード8世。

といったジョージ6世をとりまく個性的な登場人物も見どころです。

また治療前のアルバート王子の演説に失望する多くの聴衆と、克服後に賞賛するまわりの変わりようは、わかりやすかったです。

 

 

受賞

アカデミー賞作品賞を始め、多くの受賞歴があり、日本でも大ヒットとなりました。

映画ですから、多少史実とは違ったストーリーや演出になっています。

 

 

主な登場人物

ヨーク公
=アルバート王子
ジョージ6世
:主人公

 

ライオネル・ローグ
:療法士
:アルバートの吃音症の治療にあたる

 

エリザベス妃
:アルバートの妻

 

ディビット王子
エドワード8世
:アルバートの兄

 

ジョージ5世
=国王
:アルバートの父

 

あらすじ

映画のヨーク公アルバート王子(ジョージ6世)は、1925年大英帝国博覧会閉会式で、父王ジョージ5世の代わりに演説を行なうことになりました。

しかし吃音症のためうまく話せず、聴衆も自身も落胆します。

 

 

そこで吃音症を治そうと何人かのドクターにかかりますが、治療はうまくいきません。

その一環としてある日、妻のエリザベス妃はライオネル・ローグの診療所を見つけ出し、まずは自分ひとりで訪ね、治療を頼めるか聞きます。

するとライオネルは、自分の診療所に来るように伝えます。治療してほしい相手はヨーク公アルバート王子(ジョージ6世)だと伝えても、態度は変わりません。そこで後日、アルバート王子を連れて、ふたりで再訪することになります。

 

 

ライオネルは風変わりな治療士でした。

まずお互いに呼び名を決めようと言い出します。アルバート王子のことを家族でしか呼ばないという「バーティ」と呼び、自分のことは「ライオネル」と呼ぶようにいいます。

相手が王族でもへつらうようなまねはしません。アルバート王子はプライドが高い人でした。そのため、ライオネルのそういった態度が不作法だと怒り出します。

すると
「あなたはかんしゃく持ちだ」
と指摘します。

アルバート王子は腹を立てて去ろうとしました。するとライオネルは、アルバート王子が朗読した声をレコードに録音して「記念に」と渡します。

 

 

結局、アルバート王子はライオネルの診療所に通って治療を受けることになりました。アルバート王子とライオネルは距離を縮めていきます。

 

 

そんな折、ジョージ5世が崩御し、アルバート王子の兄・ディビット王子がエドワード8世として国王に即位します。

けれどもエドワード8世には問題がありました。それはエドワード8世が結婚したいと臨んでいた女性には離婚歴があったことでした。宗教上の理由から離婚歴のある人とは結婚できません。そのことを兄に指摘したアルバート王子は、兄より吃音症をからかわれ、「自分が王位につきたいから吃音治療をしているんだろう」と責められてしまいます。

 

 

ライオネルはアルバート王子に「あなたのほうが王にふさわしい」「自信をもつべきだ」とアドバイスしますが、アルバート王子は「それは反逆罪にあたる」「あなたのようなビール醸造所の息子でオーストラリア人の平民のあなたに言われる筋合いはない」とかんしゃくをおこしてしまい二人の仲は決裂してしまいます。

 

 

その後エドワード8世は結婚を選び、国王の座を早々に退位してしまいます。そしてアルバート王子がジョージ6世として即位します。しかし吃音症は相変わらずでした。そこでジョージ6世夫妻はふたたびライオネルの診療所を訪ねることとなります。