映画『あゝ野麦峠』こんな時代があったなんて!
コロナ禍において感染病に関する小説や映画が注目されているそうですね。
邦画では2009年「感染列島」や1979年「あゝ野麦峠」も人気だと聞きました。
目次
原作
映画『あゝ野麦峠』は山本茂実著作のノンフィクション『あゝ野麦峠』を原作としています。
|
大ヒット
配給収入は14億円の大ヒット!
映画公開年の邦画配給収入ランキング2位となりました。
その成功を受けて続編『あゝ野麦峠 新緑篇』を1982年に発表。しかし前作に遠く及ばなかったそうです。
野麦峠とは
長野県の山道。
昔から野麦街道最大の難所といわれている峠です。
峠に群生している隈笹が10年に一度、麦の穂に似た実をつけたことから地元の人に「野麦」の峠といわれたことから「野麦峠」と呼ばれるようになったとか
小説によれば、勤め先で妊娠し、峠越えの厳しさに子どもを流産してしまう女工さんも少なくなかった。故に野産み峠となり、野麦峠となった、とのことです。
映画の中でも茶屋のばあさまがそんなことをつぶやいています。
映画『あゝ野麦峠』は
明治時代後半。
現在の岐阜県飛騨地方から長野方面の製糸場に、女工として出稼ぎに出ていた10代の若い女性たちのお話です。
その行き帰りに、映画題名の「野麦峠」を歩いて通ります。
初めて職場に向かう女の子たちが一列に並んで山の中の細い雪道を歩いて向かうシーンは見どころのひとつです。
当時、日本の絹産業は外貨を稼ぐ一大事業でした。
製糸場で、生糸を蚕から巻き取る手作業を行なっていたのが女工さんです。機械化される前は手作業で行なっていたため、多くの人手が必要でした。
女工さんたちは毎年数多く募集され、職場の宿泊施設にすし詰め状態で寝泊まりして工場で朝早くから夜遅くまで働きました。
過酷な労働は可哀相だと思われますが、麦ご飯とはいえ食事つきで、おめでたいことがあればおまんじゅうまで食べられる環境を有り難かった人たちもいたでしょう。
貧しい農村の家々では、口減らしができ、給金までもらってくれる話は「良い話」だったでしょう。
映画の演出
映画として観客をひきつけるには、おおげさな表現やエピソードが必要ですので、悲惨なエピソードを詰め込んでいます。次から次へと問題が起きます。
しかし実際は各工場で待遇の差が大きく、悲惨な環境もあれば厚遇もあったそうです。これは現代も同じですね。
最後は悲しいエピソードと大竹しのぶさんの迫真の演技で涙を誘います。
道のり
飛騨古川町(岐阜県)を夜の明けない前に出発。岡谷(長野県)まで40里の雪道を三泊四日で歩いて超えていきます。1里は約4キロですので160キロ歩くことになります。
だいたいのイメージの地図です。大変な道のりですね。
劣悪な職場環境
軍隊のように朝たたき起こされ、せかされて身支度をする。
食事時間は10分あるいは20分。立って食べることも。労働時間を増やすために更に5分短縮と言われる時期も。
朝は時計の針を早めて夜は遅らせて労働時間を延ばした時期も。
脱走しないように建物はカギをかけられている。
労働中はビンタされ竹刀でたたかれる。
ノルマにいたらないとお給料が減給される。
現在活躍の女優さんたち
主役は大竹しのぶさん
はつらつとした表情、かわいらしい物言いが魅力的です。
原田美枝子さんや古手川祐子さん、野村昭子さんなど現在も活躍中の女優さんたちのお若い姿も必見です。
映画『あゝ野麦峠』
1979年
監督:山本薩夫
脚本:服部佳
音楽:佐藤勝政井みね:大竹しのぶ
篠田ゆき:原田美枝子
三島はな:友里千賀子
庄司きく:古手川祐子
足立藤吉:三國連太郎
政井友二郎:西村晃
政井辰次郎:地井武男
足立春夫:森次晃嗣
川瀬音松:赤塚真人
お助け茶屋の老婆:北林谷栄
金山徳太郎:小松方正
政井もと:野村昭子
丸正の検番:江幡高志
伏見宮殿下:平田昭彦
伏見宮妃殿下:三条泰子
平井とき:浅野亜子
久保えい:岡本茉利
杉山みつ:黒川明子
荒井たみ:志方亜紀子
山村さわ:今村文美
野中新吉:山本亘
足立とみ:斉藤美和
黒木権三:三上真一郎
政井菊五郎:渡辺由光
石部いわ:中原早苗
木谷やえ:津田京子
井上まさ:采野圭子
松本さだ:石井くに子
山安の守衛:長浜藤夫
きくの父親:福原秀雄
ナレーター:鈴木瑞穂