映画『レベッカ(1940)』大好きなミュージカル原作
ふと思い立って映画『レベッカ』を鑑賞しました。
映画製作は戦前。アメリカ公開は1940年。日本公開は戦後の1951年。
アカデミー賞受賞作品です。
この映画は初めてミュージカル『レベッカ』を観劇する前に一度観ていて、その後にまた一度、今回は久々に3度目の鑑賞です。
最初映画を観たときは、あまり馴染めずよくわからなかったので、小説『レベッカ(デュ・モーリア著)』も読んでみました。小説のほうが詳しかったのですが、訳が古くさくこちらも馴染めませんでした。当時はそれを自分の中で良しとできなかったのです。
ミュージカル『レベッカ』を観てからはその魅力にハマりました。大好きなミューカルナンバーのひとつです。
すっかりミュージカルストーリーの筋道を覚えてから映画を観てみると、ミュージカルは映画を丁寧になぞっていることがわかります。
それだけでなく登場人物の心情を深く掘り下げて歌詞にして、その歌詞にふさわしいメロディーを美しい旋律で作り上げ、狭い舞台で場面転換し一連の流れを実現させています。
よくぞあの映画からこれだけ素晴らしいミュージカルを創り上げたものです。
やはりミヒャエル・クンツェさん、シルヴェスター・リーヴァイさんは天才なのですね。
今の時点で映画『レベッカ』を知らない人はどういうタイミングで映画『レベッカ』に到達するでしょうか。
✔ ヒッチコック監督のファンで作品を漁っているうちに?
ヒッチコック監督の作品は数多くの受賞歴がありますがアカデミー賞作品賞を受賞したのは『レベッカ』だけです。
✔ 作家デュ・モーリアのファン
デュ・モーリアの代表作は『レベッカ』『鳥』などです。
✔ 私のようにミュージカル『レベッカ』をきっかけに?
ミュージカル『レベッカ』が大好きでまだ映画を観たことがない人にはぜひお奨めしたいです。
映画『レベッカ』
1940年アメリカ公開
1951年日本公開
アルフレッド・ヒッチコック監督
目次
主な登場人物
わたし=主人公
マキシム:マンダレイの主人
レベッカ:マキシムの前妻
ダンヴァース夫人:使用人リーダー
ジャック:レベッカの従弟で愛人
ホッパー夫人:わたしの元の雇い主
あらすじ(全編)
ネタバレ注意
※ベン省略
※天使の置物破壊省略
冒頭
わたし(主人公)が見る夢のシーンから始まる。道を進むと正面に見えるのはマンダレイ(大きなお屋敷)。懐かしい気持ちがするが、もう戻れない。戻れなくて良かったとも思う。
わたしはホッパー夫人の付き人をしていた。ホッパー夫人が快適にすごせるよう指示にしたがい、おしゃべり相手も務める、そんな仕事だ。
ある日ホッパー夫人に付き添ってモナコ国のモンテカルロのホテルに滞在していた。そこでイギリスの大富豪マキシムと出会う。
モンテカルロにて
滞在中にホッパー夫人が病気になり看護師をやとったため、わたしは昼間に空き時間ができた。それでマキシムとデートを重ねることが出来、二人は恋に落ちる。
元気になったホッパー夫人は娘が婚約したと連絡を受け急いでニューヨークに戻ると突然言い出す。
驚いたわたしはマキシムにもう会えなくなると思いなんとかこのことを伝えなければと連絡をとるが、この日に限ってマキシムがなかなかつかまらない。
出発の車に乗り込む寸前までヤキモキしていたわたしはホッパー夫人を車に待たせたまま最後の賭けに出てマキシムの部屋へ。するとノンキにシャワーを浴びていたマキシムは驚いて「結婚しよう」とプロポーズをしてくれた。
そしてホッパー夫人を部屋に呼んでマキシムから事情を説明してくれた。
ホッパー夫人は最後に「あなたにマンダレイはふさわしくない」とイヤミを言って去って行った。
マンダレイへ
やがて二人はマンダレイの屋敷に向かうが、屋敷の直前で雨に降られる。ずぶ濡れになって屋敷の門をくぐる。すると屋敷の使用人がズラリと勢揃いをして二人を迎えてくれた。
そこで使用人の女リーダー・ダンヴァース夫人と対面する。毅然としたダンヴァース夫人におじけづくわたし。雨に濡れていたことが余計みじめに感じる。
次の日、屋敷の中をひととおり見て回るわたし。前妻レベッカの部屋は「今は誰も使っていない」と説明されるがちょっと気になる。
マキシムの姉夫婦が新妻のわたしを見にやってくる。挨拶をしようと部屋に近づくとどうやらわたしの悪口を言っているようだ。
それでも気を取り直して挨拶をかわす。マキシムの姉からは「あなたは外見を気にしない人なのね。とりあえずその髪形はなんとかしなさい」と言われてしまう。
わたしは常に前妻レベッカと比較されている。そして劣っていると思われている。そんな劣等感が常につきまとう。
レターセット処分
しかし意を決してダンヴァース夫人にレベッカと印字されているレターセットを処分するように伝える。
するとダンヴァース夫人は
「御主人様のものですが」
と言う。
「いまの主人はわたしよ」
と言い返したわたし。
「かしこまりました」
とダンヴァース夫人。
舞踏会
またわたしは舞踏会を開いて「マンダレイは復活よ」と回りの人に幸せなところを見せてあげたいとマキシムに頼んでみた。最初はしぶっていたマキシムだったが、あまりにも懇願されるため承知する。
わたしははりきって舞踏会にどんな仮装をするかアイデアを練っていた。するとダンヴァース夫人から「一族の絵を参考にしたら」とアドバイスを受け、廊下に飾ってあった祖先の肖像画を見て歩く。そのうちのひとりの美しいドレス姿に目を止める。
ダンヴァース夫人は「これにしたらどうでしょう」とすすめる。
わたしが「誰なの?」とたずねると
「先祖のひとりです」とダンヴァース夫人。
ダンヴァース夫人のすすめもあることだし、この衣装にしようとマキシムには内緒で衣装作りをすすめたわたし。
舞踏会当日、お客様もそろい始めたが、なかなか姿を現わさないわたし。皆さんを特にマキシムを驚かせようと思っていた。いつもの控えめな服装ではなく、派手な衣装をまとうわたしにきっとマキシムは驚くでしょう。
そう思い肖像画の美しい衣装で登場したわたし。
すると場が凍りつく!
とくにマキシムはどんどん顔が険しくなっていって
「着替えてこい!」
と怒鳴る。
なぜ?!
わけがわからないとパニックになっていたわたしに聞こえてきたのは
「レベッカの去年の衣装よ!」という声。
あの肖像画は先祖ではなく前妻レベッカだったのだ。
ダンヴァース夫人の誘導
ダンヴァース夫人はそれを知っていてワザとわたしにこの衣装をすすめたのだ。
マキシムを悲しませてしまったという罪悪感とダンヴァース夫人に対する怒りでいっぱいになるわたし。目の前にダンヴァース夫人の姿が。レベッカの部屋に入っていった。
追いかけてダンヴァース夫人を責め立てる。
しかし意に介さないダンヴァース夫人。
それどころか
「あなたにマンダレイの主人は似合わない。いますぐ出て行くのよ」
と窓を開けて
「飛び降りなさい。簡単なことよ。さあ、さあ」
とすすめる。
窓の外は深い霧。飲み込まれそうになるわたし。
遭難船救助
そのとき花火があがった。遭難船がでたのだ。屋敷の男どもはみな救助のため海岸に向かった。我に返るわたしとダンヴァース夫人。すんでのところで助かった。
明け方まで救助は続いた。わたしはマキシムを探しに海岸へ行った。すると海岸そばの小屋の中にマキシムはいた。そして悲愴な面持ちで椅子に座っていた。
救助のため疲労困憊したのだろうとねぎらいに近づくと「もう自分はダメだ」と絶望的になっている。またわけがわからないことを言い出したと思ったわたしはなんとか理由を聞き出した。
マキシムの告白
観念したマキシムはわたしを信頼して本当の出来事を話してくれた。
「レベッカは美しく魅力的な外見で一時は他の男どもと同じく魅了され結婚した。しかし四日目ですでに本性がわかった。もう結婚生活は続けていけないと思った。
しかしレベッカは
『すぐに離婚すると世間体も悪いでしょう。私が良い妻を完璧に演じてあげるわ』
と言って宣言通り表向きは素晴らしい妻を演じた。
あの日は他の男性の子どもを妊娠したと告げられた。
『それでもマンダレイの跡継ぎと認めて育て上げるのでしょう。お笑いだわ』
とあざけ笑ったレベッカ。
しかし思わぬことがおきた。
レベッカは自分で転んでその拍子に頭を打って倒れた。
死んでいた。
遺体を船に乗せ沖に出ると船底に穴をあけ自分はボートに移り、船が沈むのを見ていた。
その後遺体確認でレベッカだと証言をしたのは嘘だった。本当のレベッカの遺体と船がきのうの捜索で発見されたのだ」
と。
「それは事故でしょう!」
とわたしは言ったが、マキシムは
「誰が信じる?」
と。
事情聴取
翌日事情聴取されるマキシム。
発見されたボートの船底に穴が空いていたことから
「レベッカは自殺したのではないか」
いや
「殺されたのではないか」
ということが論点となっていた。
マキシムは
「夫婦仲は良かったのか、険悪だったのか」
と激しく追求された。
すると傍聴していたわたしのほうが意識を失い倒れてしまった。
尋問は一時中断された。
ジャックの強請
わたしとマキシムが休憩していると従弟のジャックがやってきて
「そろそろ高級車のセールスにも飽きた。田舎に広い屋敷でも持ってのんびりと暮らすのもいいものだ」
と言ってきた。
そして
「レベッカは自殺する動機がない。その証拠に亡くなった日に自分宛に手紙を残している。この内容はこれから自殺する人の書く文章ではない」
と主張した。
レベッカはその日、病院へ行っていたという。
「きっと自分の子を妊娠したんだ。それを知らされたマキシムがカッとなってレベッカを殺害したのだろう」
というのがジャックの言い分だ。
レベッカの真相
警察はレベッカが診察を受けたという医師から証言を得ようと病院へ向かった。
医師は最初「守秘義務ですから」と明かしてくれなかったが、最終的には「自殺する可能性はあるでしょう」と話してくれた。
なぜなら
「彼女は癌に冒されていて余命数ヶ月でしたから」
と。
この証言によりレベッカは自殺だったと決定づけられた。
マキシムは悟った。
「レベッカは自分がカッとなりやすい性格を知っていた。他の男性の子を妊娠したと伝えたらカッとなって殺害すると考えた。だからワザと嘘を言ったんだ。自分に殺させたかったんだ」と。
マンダレイの屋敷が
無罪放免となったマキシムはまず屋敷に電話を入れて事の次第を告げた。
そして急いでマンダレイの屋敷に向かった。
屋敷が近づくとまだ夜中なのに空が明るい。「なんだろう?」と思いながら近づくとそれは火事だった。
マンダレイの屋敷が一面火の海になっていたのだ。
わたしとマキシムは無事に再会。
逃げ出してきた使用人たちと屋敷を燃え尽くす火を呆然と眺めていた。
するとレベッカの部屋に人影が見えた。ダンヴァース夫人だ!
燃える屋敷の中にひとりダンヴァース人が取り残されていたのだ。いや、自分で選んだ道かもしれない。もしかしたらダンヴァース夫人が火をつけたのかもしれない。
映画
『レベッカ』
アメリカ公開
1940年3月22日日本公開
1951年4月7日