映画「長ぐつをはいたネコと9つの命」感想と原作あらすじ

この映画の主人公は“長ぐつをはいたネコ”。

名前は“プス”。

変な名前?!ですね。

あまり聞かない名前です。

実はアメリカの絵本作家ポール・ガルトン版のお話「長ぐつをはいた猫」のネコの名前なのです。

現在有名な「長ぐつをはいた猫」は、ペロー版、グリム版、ガルトン版の3つのお話です。

比べてみますと、多少の違いがありますが、ほぼ同じお話です。

ただしペロー版、グリム版は猫のことを「猫」と呼んでいるのに対して、ガルトン版は「プス」と名前をつけています。

その分愛着がわきますね。

映画でもそのまま「プス」を採用したのですね。

 

 

長靴をはいた小娘

このお話の原型の
「長靴をはいた小娘」は擬人化された猫、猫は変装した妖精。

貧しい飼い主の青年が王女と結婚するまでの手助けをするヨーロッパのおとぎ話です。

ということは当初はメス猫だったようです。

 

最初はペロー

「シンデレラ」で知られるフランスの作家のシャルル・ペローが1697年に「長靴をはいた猫」を出版しました。

その後「グリム童話」のグリム兄弟が1812年に「長靴をはいた猫」を出版しました。

ガルトンは「長靴をはいた猫」の翻案とイラストを手掛け1976年に、日本では1978年に出版しています。

 

 

映画「長ぐつをはいたネコと9つの命」

さて、おとぎ話の「長ぐつをはいたねこ」に「9つの命」とはどういうことなんでしょう?

最初に映画のタイトルを見たとき不思議に思いました。

“長ぐつをはいたプスという名前の猫”というところだけ童話より引用していますがあとはオリジナルストーリーです。

猫のプスは失われた命を取り返すためにひとつだけ願いをかなえてくれる「願い星」を示す地図を盗もうとします。

しかしこれを狙っていたのはプスだけではありません。

その地図を狙ってのドタバタ劇、地図の示す方向へ進んでいく途中のいろんな出来事。

最後はハッピーエンドです。

 

 

感想

そのオリジナルストーリーがよく練られていてとてもおもしろいです。

地図は持った人によって見える形が変わります。

行く手もその地図通りに変わります。

その発想もおもしろいです。

地図を持つ人によって目の前の道がたちまちに変化する。

その様を一目で表せるのはアニメーションならではです。

自信満々だったプスに死神のオオカミが立ちふさがります。

初めて命が惜しくなるプス。

元婚約者の猫キティも地図を狙って現れます。

性悪で裕福なパイ屋の息子、3匹のクマと家族のようにすごしていた少女とも地図を取り合います。

キャラが際立った登場人物との掛け合い、スピード感あふれる展開、地図がどんな場面をあらわすのか、目まぐるしく変わり、飽きることがありません。

最後に悪人が罰を受ける展開もスッキリしますね。

 

 

「9つの命」とは

この映画のプスは9つの命を持っていて8回も生き返ったというのです。

さあ、命はあと1つ。

9つ目の命を生きています。

9回殺されたらもう生き返ることができません。

しかし「願い星」に願いを叶えてもらったら、「あと1回の命しかない!」と恐れることはありません。

以前のように命をおそれず戦えるのです。

1回の命しかないと思い知った時のプスの絶望、恐怖。

これは「命はひとつだから大切にしなければならない」という教訓も含まれているのでしょう。

 

 

映画「長ぐつをはいたネコと9つの命」のあらすじ

「プス」は勇敢な猫です。自分より強い相手にも立ち向かい恐れを知りません。

だからこそ簡単に命を落としてきました。

これだけ生まれ変わると慣れっこになりますね。

「また生まれ変わればいいじゃん」と思うでしょう。

8回生き返ったときに手当をしてくれた獣医先生より、「今度死んだらもう生き返れない」ということを重々に諭され、プスはようやく理解します。

しかしプスは不気味なオオカミに追われていました。

そのオオカミはとてつもなく強くとても太刀打ちできません。

逃げているうちにプスは
「まともに戦ったら負ける」
と肌で感じました。

すると急にブルブルっと鳥肌が立ち身震いします。

もう無茶なことはできない。
死にたくない。
引退しよう。

プスは一匹の猫として、猫好きで猫をたくさん飼っている女性ママ・ルナの家を訪れ一員にしてもらいます。

過保護に守られた毎日は退屈でたまりません。

そんなとき願いを叶えてくれる「願い星」が記された地図があることを知り、地図を盗もうと計画します。

猫に扮装してママ・ルナの家に紛れ込んでいた犬のワンコと元婚約者の猫・キティともにパイ屋に潜入し地図を盗むことに成功。

しかし3匹の熊と女の子のゴルディロックス、パイ屋のビッグ・ジャック・ホーナーに追いかけられ、願い星の地図を開きその道へ進みつつ戦いを続けます。

途中死神のオオカミにも出くわします。

パイ屋のビッグ・ジャック・ホーナーは金に任せていろんな武器や魔法、人海戦術を駆使して地図を取り戻そうとします。

そんな中、プスは自身の考えが変わっていきます。

 

映画
「長ぐつをはいたネコと9つの命」
2023年3月17日公開

 

物語「長ぐつをはいたねこ」のあらすじ

「長ぐつをはいたねこ」は子供の頃に読んだことがある人も多いでしょう。

「でもどういう話だっけ?」「この映画の原作なの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんね。

昔話の「長ぐつをはいたねこ」は、猫のクセに長ぐつをはいて二本足で歩いてご主人を幸せにする賢いネコの物語です。

そのネコのご主人は農家の三男坊。

お父さんが亡くなった時の遺産に一番上の兄は水車の粉ひき小屋を、二番目の兄はロバをもらいました。

残された三番目の息子にはネコくらいしか残っていません。

一番役に立ちそうもない遺産をもらって三男坊はがっくりします。

ところがそのネコは人間の言葉を話すのです。そして三男坊を励まして
「長ぐつを与えてくれたら幸せにしますよ」
というのです。

自信たっぷりのネコの言葉に三男坊は、長ぐつを用意して与えます。

すると長ぐつをはいたネコは、まず大きな袋に餌をしかけ、鳥を誘導してつかまえます。

そしてお城の王様へ「私の主人の伯爵からの賜りものです」と献上します。

毎日のように獲物を捕らえては王様に献上していたので、城の情報をキャッチすることができました。

なんでもこれから王様と娘のお姫様が湖のそばを馬車で通るというのです。

長ぐつをはいたネコは三男坊のところへやってきて
「急いで湖に行き、裸になってつかってください」
と言います。

三男坊は言われたとおりにします。

そこへ王様とお姫様の馬車が通ります。

長ぐつをはいたネコは王様に
「私の主人の伯爵の洋服が盗まれました」
と訴えます。

すると王様は家来に

「城に戻って一番いい服をもってきて着せなさい」
と伝えます。

三男坊は王様の一番いい服を着させられて一緒に馬車へ乗ります。

長ぐつをはいたネコは馬車の先を急いで進み

その先で干し草を作っている100人に
「この牧場は伯爵様のものだと言うように。さもなくばみなぶち殺してやる」
と脅します。

またその先の畑で麦を刈っている200人に
「この畑は伯爵様のものだと言うように。さもなくばみなぶち殺してやる」
と脅します。

またまたその先の森で木を切り倒している300人に
「この森は伯爵様のものだと言うように。さもなくばみなぶち殺してやる」
と脅します。

ネコが人間みたいに二本足で立って長靴をはいて歩き回っていたために、みんなおびえて言うことを聞きました。

果たして、王様の場所がそこを通りかかったときに、みなネコの言うとおりに答えました。

ネコはさらに魔法使いの城へ行き
「どんなものにでも化けられるというのは本当ですか?」
と挑発します。

魔法使いは大きな象に化け、次に強いライオンに化けました。

ネコが
「小さいネズミは無理でしょう」
とけしかけると、魔法使いはネズミに化けました。

その瞬間ネコはネズミをパクリと飲み込んでしまいました。

後には魔法使いの立派な城だけが残りました。

馬車で通りかかった王様には

「この城は私の主人の伯爵の城です」

と伝えます。

するとすっかり信じ込んだ王様は、三男坊を跡継ぎにと娘のお姫様と結婚させました。

ネコは特別の地位と身分を与えられました。