映画『薬の神じゃない!』泣ける感動社会派映画!あらすじ

なんとなく「おもしろそう」という予感で選んだ映画でしたが、予想外に社会問題を含んだ、感動で泣ける作品でした。

2000年台初頭、中国では政府が認めない薬はどんな薬でもすべて輸入禁止でしかも大罪でした。この映画で取り扱っていた慢性骨髄性白血病に効く薬は値段が高く、庶民はそうそう買えませんでした。しかし薬を飲まなければ死んでしまう。それを利用した悪徳商法も横行し、すがる思いで買ってしまう患者たち。

そんな中、始めは金儲けで始めたジェネリック薬の密売でしたが、必要とする人たちがいることを知り、儲け度外視で捕まることを覚悟して提供していたひとりの経営者の物語です。

最後、刑務所に移送される車とそれを取り囲んで見送る大勢の患者たちのシーンは、バックに流れる音楽もそのシーンにふさわしい感動的な曲で涙を誘います。続くエンドロールはそれを引き継ぐかのような、哀しげな曲調のデュエット曲が流れ、しばし涙が乾く時間を与えてくれているようでした。

中国映画はあまり観ないので初めて拝見したと思いますが、主役のシュー・ジェンは見た目がムロツヨシさん似。突然キレて逆上するところは藤原竜也さんの熱い演技を彷彿とさせました。

中国の日常生活も垣間見れた場面も多く興味深かったです。

 

 

受賞歴

中国国内で大変な支持を得て数々の賞にノミネートされています。

受賞

【第55回金馬奨】
主演男優賞 徐崢 受賞
新人監督賞 文牧野 受賞
脚本賞 受賞

【第14回中国長春国際映画祭】
最優秀青年助演男優賞 王伝君 受賞

【第38回香港電影金像奨】
最優秀両岸中国語映画賞
「薬の神じゃない!」受賞

【第10回中国映画監督協会賞】
年度男優賞 王伝君 受賞

【第32回中国電影金鶏奨】
監督デビュー作賞 受賞
脚本賞 受賞

 

 

あらすじ

ネタバレ注意

 

商売不振

主人公・チョン・ヨンは強壮剤販売店を営むも家賃も支払えないほどの業績不振。離婚していて、元妻と暮らしている小学生低学年くらいの息子に時々会えるのが唯一の楽しみだった。

 

密売を始める

ある日、慢性骨髄性白血病のジェネリック薬をインドから仕入れてほしいと依頼をうける。中国政府が認めている薬は高価で庶民には負担が大きい。薬代を支払うために大変な犠牲を払い、しまいには薬代を払えず亡くなってしまう患者も多かった時代だ。

当時は中国政府が認めない薬はどんな薬であれ輸入禁止で大罪だった。いったん捕まると15~20年は出てこられない。年老いた父親をかかえ、子どもに会えなくなるのはどうしても避けたいチョン・ヨンは、簡単に乗ることができずいったんは断ったが結局密輸販売をすることにした。

白血病で薬が必要な人たちなどの中から手伝ってくれる人もいて、商売は順調にすすみ大金も入ってきた。

 

ニセ薬を売る詐欺師

ところがニセ薬を高値で売りつけている詐欺師の存在を知る。そのニセ薬で死亡してしまった人も出ていた。その集会へ出向いてみると、新興宗教のごとく信じ込みダマされて次々とニセ薬を購入する人たちを目の当たりにする。チョン・ヨンの仲間のひとりが壇上に上がり、この薬はニセものであること、死亡者も出ていること、詐欺であることを訴える。すると警備員がやってきて、取り押さえられてしまうが、チョン・ヨンたちも加わり乱闘騒ぎとなる。

 

通報される

ある日チョン・ヨンの店に突然警察がやってきた。「ニセ薬を販売しているとの通報があった」といって店の中を調べ回った。たまたま薬は店の外へ避難していたために発見されず、おとがめなしだった。

 

詐欺師に売り渡す

夜、あの集会を開いていた詐欺師がチョン・ヨンの店にやってきた。昼間の通報はこの詐欺師のしわざだった。そしてチョン・ヨンの仕入れルートを売り渡してほしいと脅してきた。このときは断ったが、よくよく考えたチョン・ヨンは、売り渡すことを決断した。今だったら捕まらないで済むと思ったからだ。そして仲間を店に集めて宴会をしながら「もう薬は売らない」と宣言する。仲間たちは絶望しながら「いままで感謝している」と言い残し去って行った。

 

1年後

1年後、チョン・ヨンは別の商売をしていた。それは縫製工場の経営だった。経営は順調だった。

ところがかつての密売仲間だったリュ・ショウイーの妻がやってきて薬は高値で売られているため手に入れることができず悲観したリュ・ショウイーは白血病の進行を思い悩み自殺未遂までしてしまった。助けてほしいと訴える。

あの詐欺師は高値で売っていたのだ。そのうえ捕まりそうになったため行方知れずになっていた。

 

再び密売を始める

このままでは薬が手に入らなくなり、助からない人が出てくる。

全国の白血病患者を助けるために、チョン・ヨンは再びジェネリック薬の密売を始める決意をする。以前買ってくれていた人限定で儲けなしの原価で売るとSNSで発信する。すると大勢の希望者から連絡が入る。

 

一斉取り締まり

なかなか捕まえることができない密売者の捜索にいきり立っていた警察は、ジェネリック薬を手にしていた白血病患者の一斉取り締まりを行ない、大勢の患者が逮捕された。「誰から購入したのか話せ」といってもだれも口を割らない。

そのうちひとりの老婆が
「私たちに死ねというのか。あの薬がなかったら死んでしまうしかない。ふつうの薬は高くて買えない。薬のために家まで失った。あの薬がにせものかどうかは私たちが一番よく知っている。(あの薬はニセモノではない、本物で効果があるうえ、安く手に入るからどうしても必要だ。ジェネリック薬を)どうか認めてほしい。」と訴えた。

その場の責任者の刑事は全員を釈放し、自ら「この事件を降りたい」と上司に申し出る。

 

警察に追われる

チョン・ヨンと共に港でジェネリック薬の積み込みの手伝いをしていた金髪の20歳の少年も白血病だった。積み込み作業の途中でたまたまトイレに行った際に警察が近くまで来ていることを知る。急いで車に戻り、チョン・ヨンを置き去りにして車を発進させる。チョン・ヨンが捕まることを避けた行為だった。警察との逃走劇の末、大型トラックに衝突し命を落とす。

 

逮捕

チョン・ヨンはとうとう逮捕される。裁判にかけられ「営利目的ではなかった」ということで大幅に減刑され懲役5年となる。

 

移送の見送り

移送されるおり、移送車は急にスピードを減速した。それはチョン・ヨンを見送ろうと道路の両側に大勢の人々が立っていたからだ。チョン・ヨンは涙を流しながらひとりひとりの顔を見る。その中には亡くなったはずの金髪の少年や自殺未遂をおこした末に亡くなったリュ・ショウイーの顔も見えた気がした。

 

刑期終了

チョン・ヨンはまたまた減刑されて3年で刑期を終えた。

 

法改正

その後中国政府は法改正した。

映画

『薬の神じゃない!』
中国公開2018年
日本公開2020年10月16日