本『岸恵子自伝』自信に満ちた~波乱万丈の人生!
2020年に日本経済新聞に連載した「私の履歴書」が好評で、多くの出版社から自伝を書くようにとお声がかかったことがきっかけで本書の執筆にいたったといいます。
自伝を書くように勧められたということは、それほど濃く興味深くおもしろい人生だと読んだ人に評価されたのでしょう。
私自身は芸能界に疎いせいか、岸恵子さんの女優としてのご活躍は、残念ながら存じ上げません。
岸恵子さんがいったん女優業と決別したという1983年の『細雪』以前の出演作品を見ても、まったくわからない。
しかしお名前とお顔は存じ上げていました。
ずっと“芸能界の人”と漠然と思っていました。どこかでなにかの作品で目にしているのかもしれませんが、気がついたら『徹子の部屋』でお見かけする“徹子さんと親しい芸能人のゲスト”といった認識です。
『徹子の部屋』での会話を拝見すると
ご自分にすごく自信がある方
といった印象です。
本書を読んでみてもやはり
自信に満ちた人
でした。
卑屈なところはひとつもなく、太陽のようにおおらかで、物事をスパッと決め、まっすぐに突き進んでいく勇気もある、人にこびることなく、我が道を行く
しかし繊細な一面もあわせ持つ
と感じました。
確か今年『徹子の部屋』に出演されたばかりですが
また早く出演してほしい、お話をまた聞いてみたい
と思いました。
「私の履歴書」は未読ですが、まさに波乱万丈の人生です。
生まれたときから恵まれた環境だったことはいなめませんが、自らも苦労をしている。持ち前のバイタリティでこなしていく。
すごいな~
と率直に尊敬しました。
また長嶋茂雄氏に対して
「野球のなにをしている方ですか?」
と聞いたエピソードは本当に笑えますね。
普通だったらそんなことを思っても他の人にあとでこっそり聞くのではないでしょうか。
知らなくても「野球の分野でエライ人」と感じるでしょうし。
それを直接本人に質問してしまうとは、よく言えば「お嬢様育ち」。悪く言えば「空気が読めない」といったところでしょうか。
しかしカラッとしているところが岸恵子さんなのでしょう。
調べながら
本書は読みやすい文体でしたが
一気に読めた!
というわけではなく調べながら読み進めました。
というのは、登場人物がよくわからない俳優や監督が多く、きっと当時の一流スター、監督なのでしょうけれども馴染みがないので、ネット検索して把握しながら、当時を想像しながら読み進めました。
また普段使い慣れない言葉遣いも多く使われていて、それは勉強になりました。
たとえば
「ピアノに向かった義父が奏でる調べのなんと力強く、時にかけそく、わたしの胸を抉ったことか」
の“かけそく”。
「満艦飾の派手な襤褸布を継ぎ合わせた長いスカートを穿いていた」
の“満艦飾”。
「わたしも、皺に囲まれた剛毅な容子に惹かれてきた」
の“容子”。
まず
“かけそく”
とは
安心してたよりにできる人。
手助け。
※心に安心感をもたらすという意味で使われたのでしょうか(推測)。
“満艦飾”とは
軍艦全体を国旗などでかざること。
飾り立てること。
女性が派手に着飾ること。
“容子”(ようす)とは
ありさま。
みなり。
※様子と一緒に辞書に掲載。現在は様子のほうを使う場合が多いと思われます。ルビがなかったら「ようこ」と読んでいました。
以上はほんの一例です。
最初調べながら読んでいましたが、途中からはメモしました。
博識を感じさせますよね。
私はちょうど仕事で大失敗をしてものすごくへこんでいた時期に、別の本を読んでいたのですが、手元に本書があったことを思い出し、本書も読み始めました。
とても救われました。