連続ドラマW『事件』50年以上前の原作をリブートした傑作ドラマ!

大岡昇平作の小説「事件」は1961年から朝日新聞にて連載され、1977年に新潮社より出版されました。

1978年に映画化され、以後何度もテレビドラマ化されています。

1978年の映画は渡瀬恒彦さんが被害者のヒモ役を演じ、数々の映画賞を受賞しています。

被害者役は松坂慶子さんです。

興味深いのは、大竹しのぶさんが1978年の映画版でもNHKドラマ版でも被害者の妹、同じ役を演じていることです。

大竹しのぶさんも数々の賞を受賞しています。

NHKのドラマ映像の一部はNHKアーカイブスで、映画はDVDで観ることができます。

 

 

連続ドラマW『事件』

連続ドラマW『事件』は2023年に放送されましたので、原作が大ベストセラーとなった時代より50年以上も後のことになります。

なので、映像は現代風にアレンジされています。

 

例えば、ドラマの中に裁判員制度を導入していますが、裁判員制度は2009年から始まったので昔はなかったことです。

また様々な場所の防犯カメラが証拠として挙げられています。犯行現場の様子だけが防犯カメラに映っていなかったということで、本当に犯行に及んだのか裁判の争点となっています。

 

 

あらすじ

元裁判官で現在弁護士の菊地大三郎(椎名桔平)。高橋茂樹(髙嶋政宏)と共に高橋・坪田法律事務所の共同代表を務めていた。

菊地大三郎はかつて判決を下した被告人が自殺したことにより冤罪ではないかとSNSで炎上しており、二度と法廷には立たないと決意していた。

ところがある殺人事件の弁護を高橋が菊地に持ち掛ける。

その被疑者・上田宏(望月歩)は殺害を認めていた。

被疑者の父・市議会議員(堀部圭亮)からの依頼を断れなかった高橋は実力ある菊地が、殺害と死体遺棄の罪で懲役15年といわれているところ、10年になれば御の字という思いだと菊地に伝えた。

二度と法廷に立たないと最初は拒んでいた菊地だが、被疑者・上田宏(望月歩)に面会すると気持ちが変わり弁護を引き受けることにした。

菊地は、上田宏の
「どうせ誰も僕の話なんか信じない」
という言葉が、冤罪事件だと炎上した事件の被告人の言葉と重なる。

彼も同じようなことを言っていた。それをちゃんと聞いてあげなかったことに罪の意識をずっとかかえていた菊地は、上田宏の言うことをちゃんと聞いてあげようとする。

それは不可解な話だった。

上田宏は現場での犯行の記憶がないという。

気づいたら被害者の女性・坂井葉津子が腹部をナイフで刺されて仰向けに倒れていたというのだ。

自分が刺した記憶はない。しかしナイフは自分が所持していたものだ。

だから犯行を認めた。

犯行を認めたが刺した記憶がない。

ということを、誰も信じてはくれないだろう

というのだ。

それはいったいどういうことなのか?!

菊地は独自調査をしながら法廷の戦いをすすめる。

上田宏が刺した記憶がないというのは意外な事実だった!!

 

 

主要キャスト

菊地大三郎(元裁判官の弁護士):椎名桔平

坂井葉津子(被害者・スナックの経営者):北香那

坂井佳江(葉津子の妹):秋田汐梨

上田宏(被疑者・坂井佳江の婚約者):望月歩

宮内辰哉(葉津子の元カレ):高橋侃

高橋茂樹(菊地大三郎の親友・共同経営者):髙嶋政宏

 

 

見どころ

原作は50年以上前ですが映像は現代に落とし込んでいます。

原作との違いは見どころです。

菊地大三郎(椎名桔平)がSNSで騒がれた過去の冤罪事件とのリンクする回想部分が入り混じりますが、今がどちらの映像なのか、わかりやすいです。

それに聞きなれない専門用語があり、ともすれば話をわかりにくくしがちですが、椎名桔平さんは活舌が良くセリフが聞き取りやすい俳優なので、まさに適任。

演出でしょうが被疑者・上田宏(望月歩)のまったく表情を変えない演技が謎を深めています。本当のことを言っているのか、嘘を言っているのか、ちっともわからない。この演技も素晴らしいです。「本当のところはどうなの?」と思わせる展開があきさせません。

最後まで一気に見てしまったドラマでした。