田中聡『明治維新の「噓」を見破るブックガイド』読み応えアリ!

この本のタイトルを見たとき思ったのは「やっぱりな」ということ。歴史は本当のところはわからないものだということが大前提。また書物が証拠とは限らない。書く時点で歪曲している可能性は否定できない。

現代でも、国会のやりとりを見聞きしてもしかりです。なにが本当なのか当事者でないとわからないし、当事者だって主観が入るので、その人の価値観で正否が決定されてしまう。

といったらなにもかもキリがないので、とりあえず、歴史を考えるときにはすべて正しいとは限らないと思っています。

だからといって面白おかしく否定論から入るのもどうかと思いますが。

 

本書は
明治維新に関して、現代の日本人が植え付けられているイメージは実は違うと声をあげている人が年々増えてきていますよ
ということを、書籍を引用して各著者の言い分を紹介しています。

 

明治維新は素晴らしい、いまこそ明治維新にならうべきだ
と主張する人たちもいますが、
明治政府は恐怖政治であった。維新のヒーローは本当にヒーローなのか
という、少し前から聞こえていた声が大きくなりつつあるのを実感とした本でした。

 

とくに、英雄とされている長州藩出身の人たちや、坂本龍馬、西郷隆盛や会津藩のことなどとても興味深く面白かったです。

もっと知りたいと思ったら、紹介されている書籍を読めばいいですし、なかなか全部は読んでいられないという人にとっては、要点をかいつまんでくれているので、有り難い本といえるでしょう。

 

坂本龍馬や西郷隆盛が英雄のごとく思われているのは、司馬遼太郎を代表とする歴史小説の影響、また世間のイメージに基づいたドラマや本の影響が大きいといえます。

2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」。
原作:林真理子、脚本:(ドクターXの)中園ミホ、主演:鈴木亮平ということで始まる前から期待され、特に地元や一部はおおいに盛り上がったと思われます。

一方で放送当初から、あまりにも一般的な歴史と違うところが目に付くといった批判もありました。

ドラマの西郷隆盛は「清濁あわせのむ太っ腹、豪胆で博愛の人」などという立派なイメージで描かれていますが、史料からは見えてくるのはそれとは正反対の人間性であるといいます。

他者をすべて敵か味方かに分け、敵と認定した相手には憎しみを向ける「偏狭」な気質があり、そのような気質になった要因は、地元の子どもたちを集めて修養する自治的集団「郷中」といわれているもので、評価は分かれるところですが、この組織が関係しているのではないかというのです。

小説(ドラマ)ですから、必ずしも正しい歴史をたどる必要はなく、また面白くなければ本も売れないし視聴率もとれないので、おおまかな歴史は根本におきつつ脚色をして人気を得る
というのはアリだと思います。

物語をつくるまえに、多くの史料を読まれたでしょうから、御存知のハズと推測します。

 

また歴史的ヒーローの坂本龍馬の有名な
「日本を今一度せんたくいたし申し候」
という言葉は「姦吏どもを打ち殺してやる」と記した後に続く言葉だったそうです。
「せんたくいたし申し候」だけが一人歩きして平和主義者というイメージがついているのが現状ですね。

 

勝海舟が我が手柄のように語ったとされる江戸城の無血開城も実のところ段取りされていて形式的なことをやったにすぎず、実際の功労者は高橋泥舟と山岡鉄舟だったといいます。

 

勝海舟はおおげさに語り手柄にしてしまうところがあったといいます。まさに言ったもん勝ちです。こういう人が歴史に名を残して敬われるのだとますます不信感が募るものです。