東野圭吾『沈黙のパレード』社会問題を含む練りに練られた傑作
『人魚の眠る家』では「脳死状態は死んでいるのか生きているのか」
『幻夜』では「震災の混乱で別人として生きることも可能なのか」など
なにかしら現代の社会問題を含んだテーマ作りはさすがです。
法律で裁くことができなかった被疑者の存在を遺族はどう決着つけるのか、深いテーマです。
練りに練られた構成です。最後のどんでん返しも納得がいきます。最近の作品の中では最も練られた構成なのではと思います。
しいていえば、犯罪を考える者がそんな複雑な犯罪を思いつき成功させられるか?ということ。実際には無理なんじゃないかと思ってしまうこと。
しかし頭のいい人が本気で取り組めば成し遂げられるかもしれない。そして更にその上をいく頭脳の湯川教授が謎をとくところが魅力です。小説なのだから、不自然な事件もアリ、警察よりも優れた捜査力をもつ一般人がいるのもアリ。そこがおもしろいのだから。
読み応えもありますし、読みやすい。下手なドラマを見るよりも楽しい時間をすごせます。
それにしても、東野圭吾氏への期待度が高すぎて、どんどん複雑にせざるを得ないんでしょうね。筆者も大変だと思ってしまいます。