なかにし礼『芸能の不思議な力』昭和芸能の生き字引・続編をぜひ!
昭和を代表する昭和生まれの日本の作詞家といえば、阿久悠、なかにし礼、山上路夫、湯川れい子、安井かずみ、荒木とよひさ。一世代下に秋元康、松本隆、森雪之丞(敬称略)でしょうか。
どの人もすごい人ばかりですが、あまりテレビに出ない作詞家さんもいる中、なかにし礼さんは、テレビにもよくご出演されている印象です。最近では徹子の部屋に出演しガン闘病のお話をされていたお姿を思い出します。
「人生の最後に小説を書きたいんだ。書きたいからガンを克服したい」
というようなことを言っていたのが印象的です。
ビートたけし・豊川悦司主演のドラマ「兄弟」が衝撃的でした。常盤貴子主演の映画「赤い月」、NHK朝ドラの「てるてる家族」、吉永小百合主演映画「長崎ぶらぶら節」など、映像で拝見しています。
直木賞作家でもあり、芸能の現場に携わってきた著者がどんな内情を書いてくれているのか、楽しみに読みました。
本の内容は、落語や歌舞伎などの古典から、映画、ミュージカル、オペラ、ポケモン、将棋、サッカーまで多岐にわたっています。すべてにおいて詳しすぎます。それに御自身も“世界劇”なる歌舞伎とクラシック音楽、暗黒舞踏を渾然一体化した舞台を創造したといいます。
エピソードのタイトルがいちいち興味深く、なかなか読むのをやめられなかったです。
2018の紅白歌合戦で北島三郎の「まつり」が復活しました。
北島三郎と「まつり」
というエピソードタイトルは、どうしても気になってしまいます。
「まつり」の作詞もしていたのですね。
五木ひろし七十歳、生きてるっていいね!『VIVA・LA・VIDA!』
え、もしかしてこれも作詞を?!
と思って読んでみたら、やっぱり。
2018年の紅白歌合戦の五木ひろしの「VIVA・LA・VIDA!」を初めて聞いて「どうしちゃったんだろうね」と家族で話していた直後でした。
この本に“70歳を期して心新たな出発をしたいという趣旨でなかにし礼さんに作詞を依頼していた”とエピソードが書かれていたのを読み、なるほど随分と思い切ったイメチェンにチャレンジしたのだと納得しました。
最近テレビは作詞作曲名は小さく表示し、一瞬で消えてしまうので、うっかりすると見逃してしまいますが、私は誰が作詞作曲した曲だろうといつも気にしながら見てしまうタチです。
なかにし礼さんがデビュー前に、最初に石原プロダクションに持ち込んだといった話も面白いです。
作詞だけでなく作曲もされた「涙と雨にぬれて」という曲。
youtubeで観てみました。古い曲でもアップしてくれている人がいることに感謝です。
菅原洋一「知りたくないの」
『あなたの過去など知りたくないの』
の“過去“が歌いづらいから変更してくれと菅原洋一に言われても「過去」という言葉に閃きがあったから譲らず、のちに大ヒットしたといいます。
この曲は、聞いたことがある歌でした。特に最初の歌詞は印象に残ります。
変更しなくて正解でしたね。
「ヒットが出るまで何曲でも、ヒットが出たら出なくなるまで、そっくり礼ちゃんに任せるからよ。なっ、礼ちゃん、頼んだよ」
と石原裕次郎にいわれ、デビュー前の、黛ジュンの芸名から考え、スタッフたちが推薦する作曲家をしりぞけて、鈴木邦彦さんに曲を依頼。最初に8曲も書いてきたのを全部否定。3度目には、楽譜を投げて「もうこれ以上書かないからね」と言われた曲が素晴らしく、その曲に歌詞をつけて大ヒットしたのが「恋のハレルヤ」だといいます。
「恋のハレルヤ」は知りませんでしたが、「天使の誘惑」は知っていました。
“THE・昭和歌謡”といった曲ですね。
戸川昌子さんは、厚化粧・茶髪でテレビに出ていた印象でしたが、シャンソン歌手だったうえに、江戸川乱歩賞をとったミステリー作家だったとは知らなかった。楽屋でタバコをふかしながら原稿を書いていたとは。
なんといっても“美空ひばり”と“石原裕次郎”とのエピソードが興味深いです。どちらも世代ではないため、偉大さは実感としてはわかりませんが、歌謡史に残る人たちに可愛がってもらっていたというエピソードがすごいです。
実際成功されたお仕事の話も盛り沢山ですが謙遜されていて、決して自慢話を並べているように感じません。他を賞賛し認めているところが、感受性の豊かさ、器の大きさを感じます。
昭和芸能の生き字引ですね。
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