長澤まさみ主演『MOTHER マザー』評判通りの衝撃作でした!

話題の映画『MOTHER マザー』をTOHOシネマズで鑑賞してきました。

TOHOシネマズではマスク必須、入口で検温、各所に消毒アルコールが置かれ、座席も一席ずつ空けて、換気もしっかりとしていますので、安心して鑑賞できました。

コロナ禍で新作映画上映が少ない昨今、待ちわびている人も多いのでしょう、初日が平日であるにもかかわらず、いつもより入りが多かったです。

映画『MOTHER マザー』は衝撃作でした。

原作小説はなく

実際に起きた事件に着想を得て新たな物語を紡いだ

作品です。

 

監督・大森立嗣

俳優・大森南朋さんのお兄さんであり、父親は見た目の迫力満点俳優の麿赤兒(まろあかじ)さん。

黒木華さん主演、樹木希林さん出演の『日日是好日』の監督でもあります。

ここをこうしてくれとかいわないタイプで、『MOTHER マザー』はドキュメントっぽいつくりになっているとのことです。

 

阿部サダヲさん

阿部サダヲさんの役はホストの遼です。

周平と秋子がゲームセンターで遊んでいたとき、すぐ近くでひとり明るくダンスのゲームをして遊んでいた遼。

その日のうちに秋子と遼は意気投合し、遼は秋子のアパートに泊まります。

このゲームセンターで踊るシーンは最初台本になかったのに踊ることとなり、阿部サダヲさんが唯一監督に『ボクできません』と相談したシーンだったそうです。

遼はチャラいノリの人で、気に入らないことがあると大声で怒鳴りつけ、ときには手を挙げるキャラです。

阿部サダヲさんいわく

「ここまでひどい人はあんまりやったことはなかった」とのこと。

それまで「悪い役」といったら映画『彼女がその名を知らない鳥たち』の佐野でしたが、悪く見えたとしてもちょっと救いが見えた役。けれども今回の遼という役は救いがない。

「そのまま逃げちゃう。とんでもない人なんです」と。

 

でも長澤まさみさんのああいう母親役も見たことがなく、とても良かった。

で、「自分もやってみよう」と。

 

というくらいなので、どんな悪い奴なのかと期待して観ました。

 

軽いチャラさや腹の底から大声を出したり喜怒哀楽が激しい演技はさすがです。

ゲームセンターのシーンは、阿部サダヲさんは恥ずかしかったのでしょうかね。軽妙な踊りがマッチしていましたけれど。

阿部サダヲさんは20代といってもいいくらい若く見えました。50歳とは思えないです。

遼はいったん行方知らずになって数年経ってまた出現しますが、数年経ったとわかる見た目になっていました。

若い頃から歳を重ねた役まで幅広く出来る役者さんですね。

 

長澤まさみさん

遼と激しいケンカをする場面がありますが、阿部サダヲさんいわく

「長澤まさみさんは運動神経がいいんですよね。ケンカのシーンでも」と。

カラダをぶつけた渾身の演技でした!

こういう役の長澤まさみさんは見たことがありません。

こんな役もやるんだと思いました。

来年の日本アカデミー賞があるんでしたら、ノミネートされるでしょうね!

 

奥平太兼さん

長澤まさみさん演じる秋子の息子・周平役です。

いままで演技をしたことがないという新人です。

知名度があるなしかかわらず、多くの新人の演技はなかなかのものです。新人の演技が入ることで空気をぶちこわしてしまうこともたびたび。なぜこんな人を使ったのかと思うことも。

しかし奥平太兼さんは最近の映像作品では見たことがない存在でした。

演技経験がないことが逆にとてもいい!自然な演技がとても良かったです。

よくぞ見つけてきた!

といっていいくらい見た目、存在感、空気、演技、セリフともに満点だと思います!

これはたまたま彼にあった役柄だったのでしょうか、監督の演出が良かったのでしょうか、彼に才能があったのでしょうか。他の役でも見てみたいものです。

奥平太兼さんは2020年現在では高校1年生ですが撮影当時は中学生だったようです。

阿部サダヲさんいわく「NHK大河ドラマのいだてんと同時に撮影していた」とのことですから。

役柄と同年代の青年を演じているのも良いですね。

 

あらすじ

周平が小学生のシーンから始まります。

 

周平(郡司翔)がトボトボと道を歩いていると、母親の秋子(長澤まさみ)が自転車で駆け下りてきます。

「周平、どうしたのー?」

周平は膝小僧をすりむいて血を出していました。それを舌でベロリと舐めあげる秋子。息子に対する秋子のこだわりを冒頭シーンで見せつけます。

 

 

「私も仕事、ふけちゃった」

といって秋子は周平をつれてゲームセンターへ行きます。

二人で遊んでいるとすぐ近くで変な踊りをしている男が。

男は遼(阿部サダヲ)といい、自称ホスト。

 

 

すっかり意気投合した秋子と遼でしたが、遼は「東京で遊び回ってすっからかんになったから名古屋へ帰る」と言います。

「せっかく仲良くなったのに」とすねる秋子は必死に遼をひきとめ、結局遼は秋子のアパートに泊まることに。

遼は秋子に「一緒に行こう」と誘い秋子は周平をおいて遼と名古屋へ行くことにします。

そして周平を「これから西に行ってくる。すぐ帰るから」と日頃お世話になっていた市役所の宇治田守(皆川猿時)に無理矢理あずけます。

しかし周平はアパートに戻り、ガスが止められてお湯もわかせないので、カップラーメンの麺を堅いまま食べたりして1週間ひとりですごします。

 

 

ようやく帰ってきた秋子と遼は宇治田守を呼びつけ周平にイタズラとしたといいがかりとつけ慰謝料を請求します。

宇治田守の家まで押しかけて遼ともみあったはずみで宇治田守は気を失ってしまいます。見ると腹部にナイフがささっていました。

遼が宇治田守を刺し殺したと思い込んだ秋子と遼はそのまま3人で地方へ逃げます。

 

 

とある旅館で住み込みの仕事をしながらすごしていると宇治田守が死んでいないことを知ります。そして被害届も出さないと言っているというので、もう逃げる必要もないからここにいることもないと旅館の金を盗んだあと3人はそこを出ます。

 

 

しばらくはホテル暮らしをしていた3人でしたが、秋子が遼の子どもを妊娠したらしいというと遼は「やっていけない」と出て行ってしまいます。

 

 

5年後、秋子は女の子を産んでいました。周平は成長し、ここから周平役が奥平太兼さんに変わります。

3人が着ている服は汚れ、浮浪者のような見た目。周平と妹は保護され、ここからソーシャルワーカー役で夏帆さんが加わります。

 

 

3人は用意してくれた宿泊施設に寝泊まりするようになり、周平はフリースクールに通うようになります。

「自分も同じような境遇で育ったから」

という亜矢さん(夏帆)が親身になってくれますが

秋子は

「私が産んだ子どもだから、私が好きなように育てる」

と激しく抵抗します。

 

 

そこに突然、遼が現われます。

「探したんだよ~」

という遼に秋子は

「出て行け!」

と激しくののしりますが、結局しばらく一緒に暮らすことになります。

 

 

ある日周平がスクールから帰ると遼と秋子があわてて荷造りをしています。

「どこか行くの?」
「借金取りがくるんだよ」

「ボクここに残っていいかな。二人だけで行けば?学校に行きたいんだ」

という周平に秋子は

「あんた、みんなに嫌われているってこと知らないの?女の子に色目でも使ったんじゃないの?それにあんたクサイって」

と傷つけるようなことをいい、周平が残ることを許しません。

結局みんなで出て行くことになります。

 

感想

毒母の典型的な話です。

 

秋子は

「子どもは自分の分身」

という考えを持っています。

だから周平をパシリに使います。

ビールを買ってきてとかお金を振り込んでとか。

 

 

周平を使って自分がやりたくないことをやらせます。

お金をせびるとかお金を盗むとか、金目の物を物色するとか。

 

 

都合のよい分身だから手放したくなくなるでしょう。

 

また

「自分の産んだ子だから自分の育てたいように育てていい」

という考えを持っています。

秋子が

「学校へ行かなくてもいい」

と判断したら行かせません。

他人の口出しを認めません。

 

 

子どもには命令できるし、威張れるし、声を荒げることもできる。

 

 

周平は秋子との狭い人間関係で生きていきます。

小学校もろくに通わなかったことも関係あると思います。

本を読む機会もありましたが秋子がそれを許しませんでした。

もっと勉強して他の世界を知っていたら自己も目覚めたのかも知れません。

無理難題を言われようと怒鳴られようと、秋子に支配されている環境から抜け出せなくなったのでしょう。

 

 

秋子の親たち。

母親は頭ごなしに

「あんたをこんな風に育てた覚えはない!もう親の子の縁を切る!」というし

父親はおろおろしてこづかいを渡してその場をおさめようとする。

 

身体を張って更生させようとはしない。

 

それが現実なんでしょう。

 

秋子と周平、遼、秋子の親たち、秋子の妹など目を背けたい現実を映画化した衝撃の問題作だと思います。

 

映画の作りがうまいな~と感じました。

 

とくに周平が起こした祖父母宅での場面はそう思いました。

 

 

また周平が就職した会社の場面で

周平が事務所から金目のものを盗んでいたという現場を社長が目撃します。

それは秋子からの指示だったことを知り、秋子に対して社長は怒り狂います。

しかしその後母子を家に招いて手料理を食べさせます。

そのうえ秋子に会社の雑用を任せ、関係まで持つという展開は男性目線の脚本だなと思いました。

 

このように映画の主役は母親ですが、監督、脚本は男性なので、男性が考える母親の気持ち、行動が描かれていると感じるところもあります。

 

いい悪いではなくとても興味深いと思いました。

 

映画

『MOTHER マザー』

2020年7月3日公開

 

スタッフ

【監督】
大森立嗣

【脚本】
大森立嗣・港岳彦

【音楽】
岩代太郎

キャスト

秋子:長澤まさみ

周平:奥平太兼

(幼少期:郡司翔)

亜矢さん:夏帆

三隅雅子:木野花

遼:阿部サダヲ

 

長澤まさみ(公開当時17歳)
主演映画
『世界の中心で、愛をさけぶ』
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長澤まさみ主演映画
『コンフィデンスマンJPロマンス編
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