原田マハ著『キネマの神様』家族愛・映画愛にあふれる感動作!
映画『キネマの神様』は、志村けんさんが映画で初の主演を!と大々的に宣伝していたのを耳にして「へー、初なんだ」と驚いたものです。
その後残念なことになってしまいましたが、このことをきっかけに本書のことを知り、読んでみました。
映画は本書を原作と発表しておりますが、ストーリーは別ものといっていいでしょう。
原作では、大企業を失脚した40歳すぎの女性が主人公。ギャンブル狂・借金だらけの父が大好きな映画を評論してブログに載せていったことがきっかけでアメリカの大物映画評論家とのやりとりすることになります。国を超えた映画愛あり、父をささえる母と娘の家族愛あり、赤字続きの名画座「テアトル銀幕」の復活劇ありといった感動作です。
映画はその父・ゴウが主役。かつて映画の撮影所で助監督として働いていました。「テアトル銀幕」の館主は同世代の映写技師。ゴウの妻は撮影所近くの食堂の看板娘でした。映画はゴウの若かりし日をオリジナルストーリーとして展開します。
原作も映画もどちらも違うストーリーとして楽しめるのは良いかと思いますが、むしろ“原案”で良かったのではと思ってしまいます。
「キネマの神様」というタイトルを使いたかったのかな?と。
原作あらすじ
大企業で年収1000万円の課長職だった円山歩(まるやまあゆみ)は、シネコン開発事業に携わるも失脚して退職してしまう。
歩の父は無類のギャンブル好きで多額の借金を常に背負い、かつては腕の良いセールスマンだったが、稼いだ金をすべてギャンブルにつぎ込み、夜逃げと自己破産を繰り返していた。
現在はマンションの管理人職に就いたが、ふっと行方不明になるクセはなおらず、戻ってくると借金が発覚し、それを娘の歩と歩の母が返す日々だった。
ある日、父の借金を肩代わりすることは、父のためにはならないと、歩は母を説得し、父に「これからは年金と管理人の給料から借金を自分で返してもらう」と告げる。
いきがいだったギャンブルができなくなった父は相当落ち込み、また行方をくらましてしまったが、ネットカフェにいると父の親友のテラシンから教えられ父を見つける歩。
テラシンは名画座「テアトル銀幕」の館主で、映画をこよなく愛していた。そして赤字続きの映画館の館主を続けているのだった。
歩の父も無類の映画好きで「テアトル銀幕」は常連客であり、DVDも借りまくり、1日に3本は観ていた。父は映画鑑賞の感想をマンションの管理人日誌に書き綴っていた。それを知った歩は、そのノートに自分の映画の感想もはさんでおいた。
歩は就活のため、ハローワークへ通い詰めた。最初は年収700万から始め、500万まで落としたが、大企業の課長だった40歳すぎの女性を雇ってくれそうな会社はみつかりそうもない。
くじけそうになっていたとき、1本の電話がかかってきた。老舗の映画雑誌「映友」の編集長兼社長からだった。
歩の映画評論を読んで「ぜひうちの専属ライターになりませんか?」という願ってもいないお誘いだった。
歩の父が、歩が管理人日誌にはさんでおいた歩の映画の感想をネットカフェから投稿したらしい。それを読んだ編集長が歩をスカウトしたのだ。
歩は「映友」に入社することになった。
編集長には、ひきこもりの息子がいた。ハッカーもできるほどパソコンスキルに秀でた息子は、歩の感想を投稿した、歩の父の映画感想をすごく気に入っていたようだ。
そこで、歩の父は「ゴウ」というネームで「シネマの神様」宛に映画の感想を投稿するというサイトを立ち上げることになった。
歩の前職の後輩の清音は、歩に好意的で、結婚でアメリカへ渡っても交友を続けていた。清音も大の映画好きで、ゴウの投稿も読んでくれていた。あるとき、清音は「英語版」を立ち上げないかと提案してきた。
英語が達者な清音が英訳をし、アップしてくれるというのだ。また英語の書き込みは和訳して歩たちに送ってくれるという。
話がまとまり、ゴウの投稿は英語でも読むことができるようになった。
すると、ローズ・バッドと名乗る人物からゴウの投稿に対して興味深い書き込みがくるようになった。それはゴウをからかっているような内容でもあるし、映画に対して愛情も感じる内容で、ときにゴウと激論になった。それが評判になり、サイトのアクセス数が劇的に増えていった。
一方、「テアトル銀幕」のすぐ近くに大型シネコンが建設されると聞いたテラシンは「大きな映画館にはかなわないから閉館する」と寂しそうに言ってきた。
そのシネコンは歩がかつて手がけてきた案件だった。自分の責任も感じた歩は、「テアトル銀幕」存続に向けて手を打ち始める。
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