池井戸潤『七つの会議』お得意のどんでん返しでスッキリ
2013年に東山紀之主演でNHKでドラマ化されたときに、原作を読んでいましたが、2019年には野村萬斎主演で映画化されると聞いて、内容をほぼ忘れていましたので、再び読んでみました。
「七つの会議」というほど「会議」が目立った印象はなく、文庫本巻末の解説を読んだとき「本書は『七つの会議』というタイトルが示すように、様々な会議を登場させた小説である」といわれ、そうだったかな~、ま、いいやといった感想をもったにすぎません。
企業小説であり、であるからには日常的に会議の場面があるので、気にもとめず読み進めたからです。
池井戸潤氏お得意分野といえるでしょう。気楽に一気に読めました。
お得意というと、
従業員は組織のイチ車輪であり、当人がやめようがやめまいが会社はびくともしない。やめたらすぐさま、その穴を埋める人材がでてくるだけ。
お互い腹の内はみせずに、牽制し合う。
下請け業者は、得意先のいいなり。コンペで値切られ、苦しい選択を迫られる。
まっとうに商売をやってきた業者が、赤字手前ギリギリの値段設定でも負け、仕事を奪われる。そういった低価格の値段で負けた相手がどうしてもっと安い値段で出来たのかといえば、考えられることはふたつ。大資本があるか、ズルをしているか。
社内での評価や出世には、不可解なことがあるものですが、勤務態度もよいとはいえず、パッとしない社員が幅をきかせているのはなぜか。疑問を持つ者は「あまり深入りするな」と言われ、そう言われるほどに追求したくなる。
営業と経理は敵対しがち。
など、『下町ロケット』と『鉄の骨』『空飛ぶタイヤ』を彷彿とさせる内容でした。
また、TVドラマ『水戸黄門』よろしく、忸怩たる思いが最後にはスカッと解決する展開は、わかっていてもおもしろいものです。