映画『グリーンブック』人種差別の中の変化と心温まる物語
アカデミー賞作品賞を受賞したことで話題となった事実に基づく映画です。
“グリーンブック”とは、アメリカが1930年代から1960年代に自動車で旅行するアフリカ系アメリカ人を対象として発行していた“黒人ドライバーのためのグリーン・ブック”という旅行ガイドブックのことです。
このガイドブックを執筆した者の名前がヴィクター・H・グリーン。
実際のガイドブックの表紙の色もグリーン。
映画に登場する車の色も緑色がかったキレイな青色でとても印象に残ります。
人種差別
アメリカにおける激しい人種差別は想像以上です。
“グリーンブック”は黒人が嫌な思いをせずに利用できるお店、ホテルなどを教えてくれるガイドブックです。
受賞
第91回(2019)アカデミー賞では
主演男優賞
編集賞
にノミネートされ
作品賞
助演男優賞
脚本賞
の三部門を受賞しました。
トロント国際映画祭(2018)では
観客賞
を受賞しました。
主な登場人物
トニー・リップ
(ドンのドライバー)
ドン・シャーリー
(黒人のピアニスト)
見どころ
トニー自身、ドンに出会うまでは黒人差別の思想を持っていました。
家に来た黒人修理人が飲んだガラスのコップをゴミ箱に捨ててしまうような人でした。
しかしトニーはドンと共にツアーを続けていくうちに、考えが変わっていきます。
また堅物で真面目な黒人のドンに対して、ノリがよくて不作法なトニーの組み合わせは最初は気が合わないように見えますが、それを超えてやがて理解し合います。
ドンがツアーの選んだ場所はアメリカの中でも差別が激しい南部地方でした。行く先々にトラブルが起こります。そのトラブルをトニーの手腕で解決する様は見どころです。
しかしドンも奥の手を借りて一発逆転したトラブルもあります。
救われたのは理解あるトニーの奥さんです。
黒人差別の思想はありません。
旅先からトニーが出していた洗練された文章の手紙はドンがかかわっていたと見抜いてお礼もいいます。
そして年中ツアーを続けたせいか、弟にも奥さんにも見放されて、ひとりの執事に世話をしてもらっているドンが、イタリア人気質のにぎやかなトニーの親戚たちが集まるクリスマスイブに受け入れてもらい、暖かい一夜をすごせた場面はほっこりします。
あらすじ
トニーはニューヨークのナイトクラブ「コパカバーナ」で働いていた。店でトラブルが起きるとなんなく解決し店のオーナーや仲間に信頼を置かれていた。
しかし店は改装工事のため閉店。
新しい仕事を探していると「ドライバーを探しているドクターがいる」との情報が入り面接に行った。
名前はドクター・ドナルド(ドン)・シャーリーだったが、医者ではなくミュージシャン(ピアニスト)だった。
ドンがこれから行く南部でのツアーでは黒人差別が激しくトラブルも予想されるため、ウワサで聞いていたトニーの手腕が必要だった。
最初は条件が折り合わなかったが、ドンが折れて契約は成立した。
ドンは堅物でハメをはずさない人物だった。それは今まで差別を受けて耐えることを身にしみてわかっているからこその言動ともいえた。
トニーはおしゃべりが好きで運転中もよく食べよく飲んだ。
ケンタッキー州に入ったときは「本場のチキンを食べられる」とはしゃいでバケツいっぱいにチキンを買ってきて、ドンにもすすめた。車の中で素手でチキンを食べると手が汚れるからといって拒否するドンにしつこくすすめ、しかたなくドンは手づかみでチキンを食べそのおいしさに驚く。「食べた後の骨はどうするんだ?」と聞いてきたドンに、トニーは「こうするのさ」といって窓からポイした。笑うドン。ついでにドリンクのカップもポイしたトニーはドンに注意されバックし回収させられた。
ドンの演奏は素晴らしくトニーは「天才だ!」とその才能に感服する。
ある会場でもドンの演奏は絶賛され、休憩時間に入った。ドンはトイレに行こうとそのドアを開けようとした矢先、支配人に止められ「トイレはあちらです」と言われた。それは外に設置されたみすぼらしいトイレだった。「外のトイレには入らない」とドンは拒否し「ホテルに戻って用を足すとなると20分はかかる」と言うと「どうぞホテルにお戻りになってください」とまで言われる。
大雨の夜、車を運転しているとパトカーに止められた。土砂降りなのに外に出ろという。警官は明らかに黒人差別でドンを侮辱した。それにカッとなったトニーは警官を殴ってしまう。二人は拘留されてしまった。「殴ったトニーが拘留されるのは仕方がないが、なにもしていない私はどうしてここにいるんだ。弁護士に連絡する権利はある」と主張したドンは当時の司法長官ロバート・ケネディに連絡したらしく圧力がかかり二人とも釈放された。
最終日に演奏する予定だったレストランでは楽屋は狭い物置をあてられた。演奏時間までまだ時間があったため、食事に行くと、ドンだけ拒否された。それは慣習だから仕方がないという。「どうしても食事をしたいというならば近くに“オレンジバード”という食堂があるのでそちらでどうぞ」と言われる。トニーも間に入り交渉するがレストラン側はどうしてもゆずらない。「ならば今夜の演奏はしない」とトニーとドンはあわててつくろうオーナーを振り切ってレストランを出て行った。
オレンジバードへ行ってみると、そこは黒人ばかりだった。白人のトニーと黒人のドンの組み合わせは奇妙だったようでトニーは「オタクは警官?」と言われた。トニーは否定しドンは天才ピアニストなんだと紹介すると「じゃあ、弾いてみせて」と言われる。ドンは店のピアノでショパンの「木枯らし」を弾いた。見事な演奏に店中が歓喜の声をあげた。店のバンドマンたちもステージにあがってきて演奏を始めドンもアドリブで会わせ楽しい演奏会となった。
「今から行けばクリスマスイブに間に合うぞ」と店を出てニューヨークへ戻る二人。
途中またもやパトカーにつかまって「今度はなんだ」としぶしぶ降りるとタイヤがパンクしていることを指摘され親切にも手伝ってくれた。
雪の中、視界も悪く眠気がピークに達し、もう運転できないとダウン寸前だったトニーに替わりドンがニューヨークの家まで運転してくれた。トニーはクリスマスイブに間に合った。
子どもたちと奥さん、親戚たちと楽しんでいたところへ、ドンもボトルを持って訪ねてきた。黒人が来たことでその場は一瞬静まりかえったが、やがて歓迎のムードに。トニーの奥さんは初対面したドンに感謝の言葉を述べる。ドンも喜びに包まれた。
映画
『グリーンブック』
2019年3月
日本公開
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