映画『瞽女GOZE』小林ハルの壮絶な半生!順次公開
映画の予告でタイトルを見たとき、すぐにピンときました。
小林ハルさんでは?!
早速調べましたら、やはり小林ハルさんの半生を描く映画だと知り、今は待ち遠しい思いです。
今までもテレビや本で小林ハルさんの半生をチラッと見たことがあります。
下重暁子著「極上の孤独」の一節
日本テレビ「知っているつもり」
等々。
大勢の「瞽女」がいる中で、小林ハルさんの生涯は強烈な印象のエピソード満載です。
それを映画で観ることができるとは、楽しみでしかたがありません。
瞽女
瞽女(ごぜ)とは
盲目女性で歌や語りをして歩く旅芸人
のことです。
室町時代の文献に記されていたといいますからその時代にはすでに存在していていましたが起源は不明だそうです。
現代では漢字が難しいこともあってあまり馴染みはないかもしれません。
私も瞽女(ごぜ)という存在は小林ハルさんのことを知るまでは、知らなかったです。
瞽女は小林ハルさん御出身の新潟県だけではなく、山梨県、静岡県、岐阜県、長野県、千葉県、埼玉県、愛知県、群馬県、広島県、山口県、四国地方、福岡県など広範囲にわたって活動していたようです。
小林ハルさん御存命時、新潟に350名もの大所帯の組織があったといいますから、驚きです。
新潟県は長岡瞽女と高田瞽女が巨大2派組織だったそうです。ハルさんは長岡瞽女です。
瞽女宿
昔は家に瞽女さんを泊めてあげる風習があったことに驚きです。
親切ですね。
地域によっては、瞽女さんをとても大事に扱ったところもあったといいます。
特に蚕を産業としている地域では、瞽女さんに触れると蚕の糸が良くなるからと重宝したそうです。
琵琶法師
琵琶法師は、琵琶という楽器を奏で歌ったり語ったりする盲目の僧侶のことですね。
琵琶法師といえば「平家物語」。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」
と最初の一節はリズムもよく有名ですね。
また「耳なし芳一」も有名ですね。
映画「瞽女」注目キャスト
大勢いらっしゃった瞽女の中でも小林ハルさんがたびたび話題になるのは、なんといっても
壮絶な人生
だからでしょう。
盲目というだけでも、大変なことなのに、ハルさんの人生は信じられない苦労の連続なのです。
・子どもの頃、厳しくしつけた母親
・優しいじいさま
・いじわるなばあさま
・最初の親方、いじわるなフジ
・何度か出てくる巫女(占い師)
・ひどい怪我を負わせたサヨ
・一晩中外にいたところを発見してくれた優しい村の有力者
は、誰が演じるのだろうと楽しみにしていました。
・小林ハルさん=川北のんさん(幼少期)→吉本実憂さん
・子どもの頃、厳しくしつけた母親=中島ひろ子さん
・優しいじいさま=綿引勝彦さん
・最初の親方、フジ=富樫真さん
・何度か出てくる巫女(占い師)=小林幸子さん
・ひどい怪我を負わせたサヨ=森レイ子さん
・一晩中外にいたところを発見してくれた優しい村の有力者=?
晩年の小林ハルさんを渡辺美佐子さんが演じます。現在87歳だそうで、公式サイトを拝見すると白髪で真っ白。このお歳まで演じられるってすごいですね。確か少し前に「徹子の部屋」に出演されていたと思います。
渡辺美佐子さんといえば「おしん」のチャキチャキとしてちょっと早口でまくしたてるような、でもあたたかさがある演技といった印象です。芯の強さがあるというイメージは小林ハルさんの晩年を演じるのにまさに適役ですね。
小林ハルさんの母親役の中島ひろ子さんも感情の起伏の激しい演技は定評がありますし、優しい爺様の綿引勝彦さんもイメージどおりです。
婆様はいじわるどころですが、左時枝さんが演じるのですね。
とても楽しみです♪
おすすめの本
映画鑑賞を深めるためにも、関する代表的な本を読んでみました。
おすすめです!
『最後の瞽女』桐生清次∥著
『鋼の女(ひと)』下重暁子∥著
監督のことば
瀧澤正治監督は公式サイトで
「私が最後の瞽女と言われた小林ハルさんの映画を監督したいと思ったのは2003年1月のことでした。
そのとき私は、彼女の過酷なまでの生き様に強い衝撃をうけました。
しかもその結末に私は涙を止めることの出来ない心地よい感動を受けたのでした。
盲目のハルさんは
「もし次の世に生まれたら虫でも良い明るい目を持って生まれてぃなぁ」
この映画は子どもからお年寄りまで観て頂ける映画として、小林ハルさんを通し、世界の人々に生きる事の喜びや楽しみを伝えたいと考えています」
小林ハルさん
1900年(明治33年)1月、新潟県胎内市生まれ。
生後3ヶ月で失明するも、11歳の頃はうっすらと光がわかっていた。
5歳で瞽女になることが決まる。
紫綬褒章、選択無形文化財保持者、人間国宝。
晩年は盲目の人が入所する特別養護盲老人ホーム「胎内やすらぎの家」に入所。
2005年105歳没。
なぜ瞽女に
占い師に見てもらったところ
「この子は親が死んでも長生きするし、そうなれば面倒をみてくれる人がいなくなる」
といわれたため。
当時は瞽女か鍼医者か按摩(あんま)しか道はなかった。
じい様が実家近くの鍼医者にハルのことを頼んだところ承諾してもらい、ハルもその気になっていた。
しかしある日、鍼医者が酔っ払った勢いで
「役に立たないと針で突っ通してしまうぞ」
と大声をあげ火ばしで囲炉裏のふちを力一杯たたいてみせたものだから
「そんなおっかない先生のところはイヤだ」
とハルは拒否してしまってこの話はなかったことに。
ハルの家は裕福でいろんな人が行き来していたため、瞽女の宿も提供していた。
樋口フジという瞽女がきたときに、じい様がハルのことを頼んだところ、21年の年季で弟子入りし、
その間の食い扶持や稽古代は家で出し、もし途中でくじけて瞽女をやめることになったら「縁切り金」を親方に払う
という契約が成立。
樋口フジがハルの親方になった。
厳しい母親
母親はぜんそく持ちで本人も「自分になにかあったら」という思いがあったのでしょう。ハルが瞽女になるときまると、ますます厳しくなった。
朝は六時を打つとひとりで起きられるようにいわれ、起きられないと朝食抜きなど。
11歳で母親は他界。
寝間で生活
ものごころついたときから、家の奥の部屋に置かれて「ハル」と呼ばれるまで声を出すなといわれて育つ。
毎日ひとり寝間にいて三度のご飯も部屋に届けてもらってほとんど出ることなくすごす。
「盲目の子がいる」と世間に思われるのがイヤだったんだろうとハルさんはいう。
5歳で針通しの稽古
針通しの稽古。最初は大き目の穴からだんだん小さい穴へ。
「糸を通せるようにならないと、お月様にお供えした大きな餅はやらない」
と言われ、餅を食べたい一心でどうにか糸を通せるようになった。
7歳で唄と三味線の稽古
毎日朝8時から11時半まで、午後は1時から4時頃まで。
午前と午後1回ずつ休み、4時をすぎると唄の文句を教わる。
小さな子ども手は柔らかく糸を押さえると指の皮がむけてしまう。痛いといえば、稽古ができなくなるから親方に痛いフリを見せてはいけないといわれる。
指袋をかけても血がにじんで自分の指がもげてしまうんでないかと思うくらい。
「痛くたって指はもげないから我慢をせ。もし我慢できなければ川へ投げてくるから」
この場合、投げてくるは方言で捨ててくるという意味。
寒げいこ
7歳の12月に、朝と夜、外で大声でうたうという寒げいこを30日間続けた。
強いノドをつくるためといわているという。
厚着をすると体がほてって声にならないから、わざと薄着で素足にわらじ、朝は5時から7時まで、夜は6時から11時まで1日2回、休みなしでうたった。
朝は自分で起きられなかったら朝食抜き。
夜は「一生他人様に面倒をみてもらわねばならない者はなんでも他人様の先にするもんでない」といわれて、お風呂もいつでも最後に入り、センを抜いた。とっくに火はとめてあってぬるい湯だった。
「おまえは一生、他人様の世話にならねばならない者なんだ。たとえおまえが悪くなくても負けねばならないんだぞ」
のごから血が出ても休ませてもらえない。
この「寒稽古で作った寒声」というのは、意味があるんでしょうかね?
9歳の春、外に出る
稽古以外、いつも寝間でひとりで暮らしていたハルも「瞽女になったら旅をするので慣らしておくように」と親方から言われて、表に出してくれるようになった。
「空気はうまいし、表って本当にいいもんだなあ。表に出たときにうれしさなんて口でいってみようがなかった」
9歳の春、盲だと知る
村の子どもたちと花摘みをして遊んでいたところ
「ハルは違う色の花を摘んでくる」
と言われて、なんのことかわからない。
「同じ形をしているから、同じ花ではないのか」
というと
「同じ花だって色が違うんだ」
「ハルは盲だから色がわからないんだわ」
「盲ってなんのことだね」
「盲も知らないんか。盲って目の見えないことだわ」
「目が見えないと、どうして色がわからないんだね」
と聞くとみんな黙ってしまった。
家に帰って
「おっかさん、盲ってなんのことだね。花摘みをして遊んでいたら、ハルは盲だから花の色がわからないんだといわれた」
と話したら母親は声をあげて泣いてしまった。
そのころは灯りがうっすらとわかるくらいにわずかに目が見えていたし、自分が目が悪いとはわかっていたが、それが盲だとはわからなかった。
「ハル、おまえは目が見えないんだから、何か商売でもおぼえないばならないんだ。もし盗人扱いされたら黙ってなくてもいいが、それ以外は自分が悪くなくてもあやまらなくてはいけないんだぞ。決して余計な口こたえは言ってはいけない。ただ『ハイ』と言っていればいいんだぞ」
と言って母親は泣いていた。
どうして母親が泣くかわからなかった。
9歳の11月、初旅へ
親方フジは二人の弟子(コイさんとクニさん)を連れてハルを迎えにきてくれた。
母は
「どんなことがあっても家に帰りたいなんていわないんだぞ。おまえが勤まらなければ家で縁切り金をとられてしまうんだぞ。誰も目の見えない子を産もうと思って産んだでないし、ハルの目の見えないのが因果なんだから、そう思ってあきらめてくれ」
といってきかせた。
またからだが小さいのに、自分と親方の荷物をかついで荷物に埋まるようにして旅だったハルの姿を見て母親は声を出して泣いていた。
親方のいじわる
ハルが唄うと「小さい子どもの唄がかわいいな」といってほめてくれる家もあったが、親方は
「いい気になって。ほめられていたかったら、そこの家にもらわれればいい」と言う。
「こんな小さい子に荷物をかつがせて」という人がいると「おまえが荷物が歩いているような格好で歩くのがいけないんだ」と言う。
火にあたらせてくれない宿にあたると「こんげな宿を借りてどうするんだ。もっと頭を下げていい所を借りれ」といい
火をあたらせてくれる宿にいって「おもえさんもこっちに来て、火にあたりなせ」と家の人が言っても、親方が「この子は寒がらないからいいのさ」とあたらせてくれない。
ごちそうを出してくれる家に泊まっても「修行中だから、いくら食べたくてもごちそうに手をつけるなよ。好き嫌いがあって食べられないっていうんだ」と厳しく言われ、ごはんとおつゆと漬け物より他は食べなかった。
しかしある家で
「おまえは好き嫌いばっかり言ってちゃんと食べないから大きくなれないんだ」と言われてつい
「家に行けばなんだって食べるんだ」
と言ってしまい、それを親方が聞いていて、その家を出てから
「このガキ、口を縫ってやる」と本気になって怒った。
「おまえはいい聞かせても、たたかれないと分からないガキだ」といって杖棒でたたいて突き飛ばした。
木の穴に泊まる
9歳だろうが、一番新人のハルがその日の宿を見つけなければならなかった。しかも親方の気に入る宿を。宿がみつかったら最初に親方、次に弟子たち、一番最後にハルだった。宿がみつからないと、ときには大きな木の穴やお堂で一晩ひとりですごすこともあった。
おこりにかかっても
おこり(マラリヤ性の熱病)にかかってガタガタふるえ、熱がでて頭が痛くなり吐き気がしても
「元気なときに働くのは当たり前。具合の悪い時、我慢して働くのが本当の働きというもんだ。だから歩けるうちは休ませてなんかおかれない」
と言われ泣きながらついて歩いた。
目が回り、ふらふらして足元がおぼつかなくなると
「人は楽をしてはろくな者になれない。歩けなかったらおんぶしてやるから唄だけでも唄え」
という。
山の中に置いてけぼり
ある午後2時頃、山の中で親方が「おしっこするから手を離せ」と言ったので、ひとりで待っていた。親方と弟子二人がずっと戻ってこない。荷物をかついでいたからすぐそばの薪置き場に荷物をおろして寄りかかっていた。夜になって誰も戻ってこず、とうとう朝になった。すると60歳くらいの爺様の声で
「おまえこんな山の中で何している」
と言われ
「ずーっと親方を待っていた」
と言うと
「なにか悪いことをしてこんな所に置かれたんだな」
と言う。
「おら、なにも悪いことをした覚えがない」
というと
「そんな悪いことをしない者が置き去りにされるわけがない。人の物でも盗んだんじゃないか。親方に口ごたえでもしたんか」
「そんなことしていない」
というと、昨夜瞽女が3人泊まっていたけどその仲間ではないかということで、つれて行ってもらうことに。
その3人はやはり親方たちだった。
親方は
「しつけのために山の中に一晩泊めたんだ。これから迎えにいくところだった。なにも連れてこなくてもよかったんだ」
と不機嫌に言う。
「おまえさん、いったいこの子がどんな悪いことをしたんだがね」
と爺様が聞いてくれたところ
「おらにひと言もいわずに、自分勝手におらの教えていない唄を唄ったんだ」
という。
「そうせば、おまえさんはそんなことでこの子を山の中に一晩置いたんだな。こんな小さい子によく教えもしないで何がわかるかね」
と親方を諭してくれ、ハルには
「おまえはまだ弟子なんだから、親方にちゃんと許可を得ないとダメじゃないか」といい
「その唄は二度と唄わないということにして、この子を許してやってくれないかね」とかわりに謝ってくれた。
親方は昔の考えの人だから、自分の流儀で教えた唄でないと、おもしろくなかったんだろうとハルさんはいう。
助けてくれた爺様は、あとで親方のいないところで
「たいした理由もないのに、こんな小さい子を山の中に置かなくたって、いろいろんなことを教えてやればいいのに、瞽女はいじわるなもんだ」
と話していたそうだ。
サヨの仕打ち
目が見えるサヨが手引きとなって歩いていたとき、ハルは唄を覚えるのに夢中になっていて、つい堀に落っこちてしまった。
するとそれを見ていた者がサヨに
「ちゃんと教えてあげないから、落ちてしまったじゃないか。目が見えるものが先をどんどん行ってしまうとダメだよ」
と注意した。
そのときは反発しなかったサヨだが、まわりに人がいなくなって、ハルがおしっこをして立ったとき、いきなりサヨが力いっぱいハルを押し倒した。ハルは荷物もかついでいたので、その重みもあって仰向けにひっくり返ってしまった。おしっこをしたあとだったので、大事なところもはだけてしまった。
するとサヨは
「自分で堀に落っこちておきながら、俺が注意されてしまったじゃないか。盲のざましてこうしてやる」
といって持っていた杖棒でハルの大事なところを二回も三回も突いた。その杖棒の先はとがった金属がついていたものだから、ものすごく痛かった。けれども荷物が背中にあったため、起き上がることもできない。
「おらが悪かったから勘弁してくれ。目が見えないで堀に落ちたのが一番悪いんだ。どうか許してくれ」
と泣いて謝った。
血がボトボト出るほど大けがをした。
その後病院へ連れていってもらったが、
「おれ、目が見えないもんだから、木の根っこに引っかかって転んでしまった」
と医者に言うと
「この傷は転んで出来たようには見えない」
と言われたが、サヨさんにやられたとは決して言わなかった。
晩年
幼いときでさえ、次から次へと驚くようなエピソード満載です。
親方にめぐまれず、いじわるな親方で苦労したハルさんは、自分が親方になったら優しい親方になると決意します。
しかし弟子にも恵まれず、人間関係に苦労した生涯でした。
晩年、施設に入ってから穏やかな人生が待っていました。
「今が一番幸せだ」
と言っていたそうです。
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「唄が楽しいなんて思ったことは一度もない。どの唄好きということもない。仕事だすけ唄うだけだ」
「私が今、明るい目をもらってこれなかったのは前の世で悪いことをしてきたからなんだ。だから今、どんなに苦しい勤めをしても、次の世には虫になってもいい。明るい目さえもらってこれればそれでいいから、そう思ってつとめ通してきた」
スタッフ
【監督】
瀧澤正治
【脚本】
加藤阿礼
椎名勲
瀧澤正治
【音楽】
まつい えいこ
キャスト
小林ハル
:(幼少期)川北のん
:(成人)吉本実憂
:(晩年)渡辺美佐子
母親
:中島ひろ子
爺さま
:綿引勝彦
婆さま
:左時枝
占い師
:小林幸子
親方・フジ
:富樫真
サヨ
:森レイ子
奈良岡朋子
寺田農
田中健
嶋田久作
国広富之
渡辺裕之
本田博太郎
小林綾子
草村礼子
宮下順子
鈴木聖奈
公開日
映画
『瞽女GOZE』
2020年
全国順次公開
上演館一覧 ↓
東京公開決定!
東京では10月23日より
シネ・リーブル池袋で上映が決定しました♪