本『文豪誕生』デビュー作から片鱗を覗かせる7人の文豪!面白エピソードも♪

文豪と呼ばれている作家の中から7人の、最初の一歩となったデビュー作や、ブレイクしたきっかけの作品を集めた本です。

文豪の才能を世間に初めて披露した最初の作品、まさに『文豪誕生』の瞬間を垣間見られる本書です。

と同時に文豪のエピソードも収められています。

有名なエピソードも多いのですが、なかなか興味深くおもしろかったです。

 

織田作之助

織田作之助は大阪出身。大阪で有名な老舗自由軒の名物・混ぜカレーが大好物だったそうです。

銀座のバー「ルパン」で撮影した椅子の上であぐらをかいている太宰治の有名な写真は、織田作之助を撮影するついでに撮られたものだったとか。

「織田作ばかり獲らないで俺も撮れ」
と店の奥から酔っ払いが声をかけてきた男が太宰治だった。

それが太宰治を撮影した写真の中でも最も有名な写真になったそうです。

江戸川乱歩

明智小五郎や怪人二十面相で有名な江戸川乱歩は日本の探偵小説の草分け的な作家です。

明治20年代には黒岩涙香の翻訳探偵小説が一世を風靡するほど盛んに読まれていました。

黒岩涙香といえば、“レ・ミゼラブル”を原案とした翻案小説『噫無情』発表した作家ですね。

明治30年半ば~大正時代は、探偵小説の空白時代で、少年ものはあったけれど、おとなの読み物としては全く存在しなかった。乱歩は英米の探偵小説をひとりで愛好し、英語を覚えてむこうで探偵小説家になりたいと思っていた。

大正9年には西洋探偵小説ばかりを満載した雑誌が好評を博したため、乱歩は

「こんなに西洋のものが歓迎されるのなら、もう日本人の探偵小説が出たっていいだろう。一つ自分で書いてみようかという気持ちになった。“私はいよいよ探偵小説を書く時が来たと思った”」

と、ちょうど失業時代で時間は有り余っていたので、二つの短編を書き上げた。

乱歩は小説を書くだけでなく、アガサ・クリスティなどの海外の推理作家を日本に紹介したり、評論を行なったり、新人作家の発掘にも力を入れました。

太宰治

太宰治はデビュー作「列車」と芥川賞候補となった「逆行」が掲載されています。

太宰治の芥川賞をめぐる“ひと悶着”は有名なエピソードですが、肝心の候補作は初めて読みました。

 

中島敦

教科書に掲載されていることで有名な「山月記」の作者・中島敦は、デビューした年に亡くなってしまったという悲劇の作家です。

「書きたい。書きたい。もう一冊書いて筆一本持って、旅に出て、参考書もなしで書きたい。俺の頭の中のものを、みんなはき出してしまいたい」
という訴えは切実です。

享年33歳。
横浜高等女学校(横浜学園高等学校)の国語と英語、のちに歴史や地理の先生だったそうです。

 

芥川龍之介

本書のトップバッターは芥川龍之介。

「鼻」は有名な小説ですが、これが運命の作品となりました。夏目漱石に激賞されたことにより自信を深めた芥川龍之介は次々と作品を発表していくことになります。

そして作家生活の始まりとなった作品は「老年」。デビュー作とは思えないまとまった完成度の高い作品です。

 

谷崎潤一郎

そして本書のトリを飾るのは谷崎潤一郎。

谷崎潤一郎も写真からして“文豪”といった雰囲気です。

しかし有名な作品は、読んでみると意外と読みやすくおもしろい作品が揃っています。まったく読んだことがなかったときは、小難しい聞いたことがない言葉の羅列で難しい小説かと思い込んでいたのですが、そのイメージは崩れました。

谷崎潤一郎の掲載作品は『刺青』(しせい)。

短編の中に際立ったキャラの確立、登場人物の異常性、心情の変化などが描かれていて、最初から出来上がっている、デビュー作とは思えない、こちらも完成された作品でした。ズバ抜けていると衝撃を受けました。

“本書の作品を読むと、彼らがなぜ「文豪」と呼ばれるまでになったかが、理解してもらえると信じている”

と編集部が自信をもって述べる理由が本書を読めばわかると思います。

おもしろい企画の本でした♪

 

~掲載文豪7人~
芥川龍之介
太宰治
織田作之助
坂口安吾
中島敦
江戸川乱歩
谷崎潤一郎

 

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