映画『あちらにいる鬼』寺島しのぶ&豊川悦司演技必見!〈原作感想・あらすじ〉

2019年に発行された井上荒野氏の小説が原作です。

当時大変話題になったそうですが、知りませんでした。井上荒野氏の本も初めて読みました。読みやすい文体だなと感じて割りと一気に読み終えました。作家生活30年以上、父親も作家だったと知り「どおりで」と思ったものです。

この小説の最大の特徴は、瀬戸内寂聴さんと、その不倫関係にあった作者自身の父親・作家の井上光晴と母親の物語であるということです。

だから大きな話題になったのでしょう。

 

 

登場人物の「みはる」は瀬戸内寂聴さんのこと。瀬戸内寂聴さんの本名は「晴美」ですから、本名を逆にしただけ。ちょっと驚きました。

執筆のきっかけは編集者から

「父と母と寂聴さんの関係を書いてみません」と提案があったからだそうです。

ご両親が亡くなって、寂聴さんからも小説の了解を得て、大胆になれたのかもしれません。

やはり親が生きていたらなかなかこうは書けないでしょう。

だから、まるでそこにいたかのような具体的で繊細な心情を表現することがかない、多くの支持を得る傑作となったのではないでしょうか。

 

主な登場人物

長内みはる(瀬戸内寂聴)
白木篤郎(井上荒野・父=井上光晴)
白木笙子(井上荒野・母)

 

構成

本書は、笙子とみはるが交互に語っています。

それで物語をつなげているようでもあり、エピソードの裏と表を書いているようでもあります。

妻の笙子が語るときは「篤郎」といい、みはるが語るときは「白木」という。

作者は「最初は、自分の視点で書こうと思った」そうです。

しかしそれでは
「自分のいない場面が書けず、想像の余地が狭くなってつまらない」

また
「母がどういう気持ちでいたのかが自分にとって大きい謎であり、その謎を解きたいという気持ちがあったから」
母(笙子)の視点から書いてみようと思ったと。

書くことで母のことを想い考え想像を膨らませることでその謎を解いてみたいと思ったのでしょう。

すごい挑戦ですね。

結果、傑作となりえた要因のひとつになり、自ら
「それは正しい選択だったと思います」
と語っています。

 

秀逸

私が特に素晴らしいと思った箇所は、みはるが白木に対して最初はむしろ嫌な印象を抱いていたのに、徐々に恋愛感情に変わっていく様子です。

小説でも映画でもそこをすっとばして展開する作品もあり興ざめしてしまうこともあります。

しかし井上荒野氏の筆は絶妙です。

読み手としては「どうしてこんな男に」と思いながらも「こうやって恋に落ちたのね」と違和感なく読み進められました。

また白木篤郎が病魔に冒されてからの生きる執念と亡くなるまでの回りの様子です。

白木篤郎は最後まであきらめない。そしてだんだんと死に近づいていくさま。見事です。

 

 

嘘つきと女たらし

傑作作品であることは認めざるをえませんが、読んでいて不快になるのは、篤郎の大嘘つきぶりと女たらしぶりです。

小説を読む限り篤郎のどこに魅力があるのかさっぱりわかりません。

なぜそれほどにもてるのか?

もてるキャラ設定なのだからそう思い込んで読みましたが、もう少しモテてる要素が欲しかったとは思います。

実の父親だと難しいのかもしれませんね。

その点、映画で演じるのは豊川悦司さんなので説明不要ですね。

 

 

キャスト

長内みはる:寺島しのぶ
白木篤郎:豊川悦司
白木笙子:広末涼子

 

『愛の流刑地』『のみとり侍』でも寺島しのぶさんと豊川悦司は見事な共演でしたね!

二人の共演ぶりは必見ですね♪

と同時に、夫の嘘つきと不倫を見て見ぬふりをする妻役の広末涼子さん。

年齢的にはずっと若いイメージです。

下唇をかみしめてこらえる演技は想像つきますが、どんな笙子を演じているのか楽しみです!

 

 

タイトル『あちらにいる鬼』

タイトル『あちらにいる鬼』にこめられた意味について原作者の井上荒野氏は、

みはるから見た笙子。
笙子から見たみはる。

あるいは
鬼ごっごの鬼の白木篤郎のイメージ。
「今、鬼はあっちの人のところにいる」というような。

とおっしゃっています。

【鬼】とは、この場合

恐ろしい人

ということになるでしょうか。

そう思うと「なるほどな」と納得がいきます。

 

あらすじ

みはるは、子供と夫を捨て男と別の暮らしをしていた。作家の仕事は順調だった。

徳島での講演会に向かう途中、編集者と一緒に車に乗り合わせていたのが、作家の白木篤郎だった。

初対面ではあるが、名前は知っていた。

会ってすぐ篤郎はみはるに
「僕は日本中たいていどこでも知っていますよ。時間があったら市内でいちばんうまいうどん屋につれていきますよ」
と言う。

自信家でサービス精神がある印象だ。

 

かと思うと飛行機が飛び立つやいなや
「こわかったら僕にしがみついていていいですよ」
と言いながら、自分がおびえているようだ。滑稽で可愛らしくも思えた。

 

篤郎の妻・笙子は幼稚園に通う長女と住み込み家政婦のやえちゃんと篤郎の祖母のサカさんと暮らしていた。笙子は二人目をみごもっていた。

また篤郎の助手としてノートに書く篤郎の小説を原稿用紙に清書をするのが笙子の役目だった。

 

悪びれもせず、ばれていることも感じず、笙子がどんな思いでいるのかも考えず、篤郎は女の名前を平気で家で口にした。

自殺未遂をおこした女にも笙子を会いにいかせる篤郎だった。

笙子はわがままな篤郎の言うことには逆らわなかった。そのほうが楽だと思うようになっていた。

 

みはるは篤郎と頻繁に会うようになる。

笙子も二人の関係は気づいていた。が、知らないふりを通した。

 

三人はどうなるのか?

若かった三人の晩年までを描いている。

 

 

 

スタッフ

監督:廣木隆一
脚本:荒井晴彦

 

映画
『あちらにいる鬼』
2022年11月公開予定