映画『ある画家の数奇な運命』新境地を開く瞬間!見どころ

第二次世界大戦をまたがる時代を背景に、ある画家を主人公にしたドイツの恋愛映画です。

 

ナチスドイツ支配下であらがえない非常識に翻弄される国民、東から西へ逃げる様子、芸術で身を立てようと苦悩する主人公が描かれています。

 

上映時間は188分と長時間です。

個人的な感想としては、ちょっと中だるみがあるように感じ、短くできたのでは?と思っています。

 

ナチスドイツの非常識で新たに思い知ったのは、ユダヤ人殺戮は有名ですが、障害者(精神異常者)も殺戮していたということ。

殺戮するかどうかを判定するのは担当になったひとりの医師にゆだねられていたということも恐ろしい。

これが事実かどうかはわかりませんが、映画の通りだとすると狂っていると思わざるを得ません。

 

そして戦後は、判定をしていた医師たちが逮捕されますが、ソ連幹部の子どもを助けた借りで逮捕を免れ、西ドイツに逃げ延びた

という映画での話もあり得ることかな

と思っています。

 

 

映画製作の条件

本作は主人公のモデルである、ドイツの現代美術界の巨匠、ゲルハルト・リヒターから出された条件

・人物の名前は変えること

・何が事実か事実でないかは絶対に明かさないこと

を元に製作されているので、ストーリーはどこまでが本当かそうでないかわかりません。

 

事実っぽいけれど、それを鵜呑みにするのは危険です。

あくまで「映画」だということで観た方がよいかなと思います。

 

 

障害者(精神異常者)も殺戮

なぜ障害者(精神異常者)を殺戮したかというと

・病院が戦争のためあふれかえって空きを増やすため

・役に立たない人間を生かしておいてもしょうがない

といった理由でした。

露骨な「人間を差別してしまう」考え。

なにも殺すことはないのに。

戦後は「安楽死」という表現になっていましたけれど、全然「安楽死」ではないですからね。ガス室送りは。

 

 

見どころ

ネタバレ注意

 

・主人公クルトの叔母が精神異常で施設に送られ、医師の判定でガス室送りになってしまう。

・叔母を判定した医師はクルトの妻の父親・カール教授だったとわかる。

・クルトを嫌うカール教授は、クルトの血を絶やすために娘(クルトの妻)の胎児を嘘の理由をつけて中絶する。

・そのため夫婦は子どもが出来にくくなり、やっとも思いで子どもを得る。

・カール教授はプライドが高く、必ず「教授」と呼ぶように相手にただす人だった。自分はいつも正しく優れた血をもつ人間だと思い込んでいた。

・カール教授に大量安楽死を指示したドイツ軍幹部が逮捕され、カール教授も拘束されるが、ソ連幹部の妻の難産を助けたことで釈放され保護される。その幹部が異動となり「これからは保護できないから西へ逃げるように。その手助けはする」と言われ西に逃げる。

・クルトは労働者の絵を壁に描く仕事をこなし生活の糧にしていた。ところが急にすべてやめて西へ向かう。案外簡単に西へ入れた。しかし時期が良かっただけだ。そのすぐあとに西へ行けなくなる。ギリギリだった。

 

・個人的には主人公の画家・クルトが新境地を開くところがとても良かったです。

芸術の中でも絵画は「もう死んでいる」「時代遅れ」の分野だと言われて、新しい芸術にチャレンジするも、どれも納得がいかず、すべて燃やしてしまう。

そしてやっぱり昔から得意だった絵画で新境地を開いていこうとする。

その過程がおもしろかったです。

モデルの巨匠・ゲルハルト・リヒターはどんな絵なのか、ネットでちらっと検索してみましたら、映画で描かれていたような感じの表現の絵画もありました。

写真を模写して、ぼかす

といった方法。

 

・新しい手法で描いた“クルトの叔母の絵画”をみたカール教授は、威張り散らしていた態度が一変、生前の叔母に判定(ガス室送り)を下した当時を思い出したのでしょう、なにも言えなくなりすごすごと退散します。

 

ゲルハルト・リヒター

参考までに、日本でその作品を観られるのは

◆愛媛県・無人島「豊島」
立体ガラス作品
2011年秋に初めて瀬戸内海を訪問。
豊島に滞在し、穏やかな海に囲まれた豊島を気に入り、作品「ゲルハルト・リヒター 14枚のガラス/豊島」を恒久展示することを承諾。

正方形に近い190センチ×180センチの透明な14枚のガラス板が、連続してハの字を描くように少しずつ角度を変えて並んでいます。全長は約8メートル。リヒターによるガラスの立体作品としては、最後にして最大のものです。

 

◆高知県立美術館
絵画
「ステイション」

 

ゲルハルト・リヒター
1932年
ドイツ生まれ
ドイツ最高峰の画家
リヒターの抽象画『アプストラクテス・ビルト(809-4)』は約2132万ポンド(約26億9000万円)で落札された。

生存する画家の作品としては当時史上最高額。

映画祭ノミネート

ヴェネツィア国際映画祭
金獅子賞

ゴールデングローブ賞
外国語映画賞

◆アカデミー賞
外国語映画賞
撮影賞

 

 

受賞

◆ヴェネツィア国際映画祭
Leoncino d’Oro Agiscuola Award
受賞

映画
『ある画家の数奇な運命』
2020年10月日本公開
(2018年10月初公開)
ドイツ映画